3Dプリンタによる造形前に3Dデータのエラーを自動修正できるクラウドサービス:3Dプリンタニュース
ミマキエンジニアリングは、3Dプリンタで造形を開始する前に、ベースとなる3Dデータのエラーを自動で修正し、3Dプリントに適した形状に最適化できるクラウドソフトウェアサービス「Mimaki 3D Print prep Pro」を2021年10月5日から提供開始した。
ミマキエンジニアリングは2021年10月5日、3Dプリンタで造形を開始する前に、ベースとなる3Dデータのエラーを自動で修正し、3Dプリントに適した形状に最適化できるクラウドソフトウェアサービス「Mimaki 3D Print prep Pro(3DP3)」の提供を開始した。
3DP3は、1000万色以上のフルカラー3Dプリントを実現する同社のUV硬化インクジェット方式3Dプリンタ「3DUJシリーズ(3DUJ-553、3DUJ-2207)」に対応したソフトウェアサービスである。
3つの簡易修正タイプと任意で各種機能を制御できる「Pro」を用意
従来、3Dデータのエラーを修正するには高額なソフトウェアが必要で、その操作や3Dデータに関する専門知識の習得に時間がかかり、3Dプリンタのさらなる普及を妨げる1つの要因となっていた。こうした課題に対し、3DP3ではWebブラウザ上でのシンプルな操作を実現。3Dデータの扱いに不慣れであっても簡単にエラー修正が行え、修正作業時間を軽減できる。また、3Dプリント前にエラー情報の有無を確認し、すぐにエラーを修正できるため、時間や材料のムダを軽減し、確実な造形につなげられる。
ユーザーは、Webブラウザから3DP3にアクセスし、3データをアップロードした後、修正方法を選択する。修正方法は、キャラクターモデルに適した「Character」、機械的なモデルに適した「Mechanical」、自動車のようなモデルに適した「Vehicle」の3つの簡易修正タイプから選択することで、それぞれのタイプに合わせた3Dモデルの自動修正条件を素早く設定できる。また、3DP3が提供するさまざまな修正機能を任意でコントロールできる「Pro」を選ぶことも可能だ。
Mimaki 3D Print prep Proが提供する8つの機能
3DP3が提供する主な修正機能としては、3Dデータの薄肉部分の厚みを増やすことができる「THICKNESS(厚み修正)」、3Dデータ内部の隙間を埋める「CLEARANCE(隙間埋め修正)」、3Dデータ形状を空洞にして軽量化などに役立てられる「HOLLOWING(中空形状修正)」、ゲームや映像用に作られた3Dデータから3Dプリントに不要なクリアパーツ(3Dデータの作成過程でガイドラインとして使用するパーツ)を除去する「CUT TRANSPARENT PARTS(クリアパーツのカット修正)、テクスチャデータを自動で最適配置する「TEXTURE OPTIMIZATION(テクスチャデータの最適化)」、3Dデータ内にあるマテリアルカラーとテクスチャを3Dプリント用データへ反映させる「MIX TEXTURE AND MATERIAL COLORS(マテリアルカラー有効化設定)」、3Dデータの穴を埋める「CLOSE HOLES(穴埋め修正)」、VR向けアバター用に作られたVRMデータの修正に特化した「USE VRM PIPELINE(VRMデータ修正)」の8つがある。
月額50米ドルのサブスクリプション型サービスとして展開
3DP3は、同社初となるサブスクリプション型サービスとして展開。利用料金は月額50米ドルで、1データ当たり1GBまでの3Dデータをアップロードできる(1度にアップロードできるデータ数は1個、アップロード回数は無制限)。ユーザーがアップロードできる3Dデータ形式はSTL、OBJ、3MF、DAE、VRMの5種で、修正後の出力形式はSTL、OBJとなる。対応言語は英語で、推奨Webブラウザは「Mozilla Firefox」と「Google Chrome」だ。
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