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誰もが手軽にROSロボット/IoTシステムの開発に取り組める「RDBOX」とは仮想環境を使ったクラウド時代の組み込み開発のススメ(5)(1/4 ページ)

IoT/クラウドロボティクス時代のシステム開発を加速化する仮想環境の活用について解説する本連載。第5回は、“現実のインフラレイヤー”の構築と運用を含めて、自動化する「ツラさ」を乗り越えるための策として、筆者らが研究開発に取り組んでいるOSS「RDBOX」について紹介する。

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 シミュレーション環境は、現実の作業環境と密接である、ROSロボット/IoT(モノのインターネット)システムの開発に対して“柔軟性”を与えます。しかし、2つの環境の間には、検証結果に大小の影響を与える、さまざまなギャップがあります。そのため、実機を使った検証を完全に不要とするものではありません。テストの“目的”と“実行コスト”に応じて、各環境を使い分けることが望ましいです。併せて「それぞれの環境に特化した、別々の実装を避ける」ことも生産性と品質を考える上で重要な方針となります。合理的に実現可能な範囲で“ギャップを埋める”というアプローチは、上記方針に沿った選択肢の一つとして有効です。

 前回の記事では、ギャップ要因の中から“インフラレイヤー”※1)にフォーカスして、クラウドネイティブな解消方法を提示しました。各アプリケーションは、クラウドネイティブな技術や考え方によって「仮想化/抽象化したインフラレイヤー」の上で動作するため、作り手はギャップを意識せずに済むのです。一方で、仮想化/抽象化したインフラレイヤーは「現実のインフラレイヤー」の存在を前提として初めて成立します。しかし、この前提を整備する難易度が技術と経済の両面で高く「(クラウドネイティブなシステムを)誰もが、手軽に試すことは困難」であるのが現状です。特に、本連載がターゲットとするROSロボット/IoTシステムの場合、一般的なITシステムと比較して、多種多様なコンピュータ機器およびネットワーク機器で構成されていることから問題が顕著に現れます。

※1)本連載では、コンピュータ資源やネットワーク資源などの「ROSロボット/IoTシステム全体を支える情報基盤」を、「インフラレイヤー」と呼称します。

 今回は、“現実のインフラレイヤー”の構築と運用も含め、自動化する「ツラさ」を乗り越えるための策として、筆者らが研究開発に取り組んでいるOSS(オープンソースソフトウェア)「RDBOX」について紹介します。

⇒連載「仮想環境を使ったクラウド時代の組み込み開発のススメ」バックナンバー

RDBOXとは

 RDBOX(Robotics Developers BOX)は、「ROSロボット/IoTシステムに最適化した、Kubernetesクラスタ」を、そのベースとなる「多種多様なコンピュータ群と、セキュアで拡張性の高いネットワーク群」も含めて自動構築および自動運用するためのフレームワークです。筆者が所属するインテックを開発元とし、GitHubでMIT Licenseに基づくOSSとして公開しています。

RDBOXのコンセプト

 翻って、日本政府は超スマート社会「Society 5.0」を提唱し、「IoT、ロボット、AIなどの先端技術を取り入れて、経済発展と社会課題の解決を両立」するとしています。筆者は、そのビジョンに共感しつつも、実現には各技術者が持つ専門性を遺憾なく発揮できることが鍵になると考えます。一方で、限られたヒト・モノ・カネの中で、雑用に近いことも含めて専門性のある取り組み以外に多くの時間を割かざるを得ないという“現実”もあります。そのような状況を打破し、Society 5.0の実現を早めるため「優れた技術者達が抱えている雑多で面倒なコトを解消し、知的創造に集中できるチームカルチャーを醸成する。」「これらの恩恵を誰もが、手軽に受けられるようにする。」をコンセプトに、RDBOXの研究開発を進めています。

RDBOXがある現場で達成できる3つの目標

 RDBOXでは、“ITを徹底活用すること”で、前記のコンセプトを実現します。ITで実現できる範囲を踏まえた上で「RDBOXが導入されたROSロボット/IoTシステムの研究開発現場では、次の3つの目標が達成できること」を利用者が得られるメリットとして掲げています(図1)。

  1. インフラレイヤーを自動的に「作る・守る・維持する」という目標
  2. ROSロボット/IoTシステムを破綻することなく改良し続けるという目標
  3. 応答速度/費用/調達性などの要求に応じて効率的にインフラレイヤーリソースを使い分けるという目標
図1
図1 RDBOXがある現場で達成できる3つの目標(クリックで拡大)

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