新CEOはユーザー企業出身、日立の産業・流通BUは「際」を乗り越えられるか:製造業×IoT キーマンインタビュー(2/3 ページ)
デジタルソリューション群「Lumada」が好調な日立製作所だが、製造業に向けたLumadaの事業展開と最も関わりが深いのがインダストリーセクター傘下の産業・流通BUである。この産業・流通BUのCEOに就任した森田和信氏に、今後の事業展開の構想などについて聞いた。
ベンチャーを傘下に加え、そのスピード感を日立に取り込む
MONOist 産業・流通BUの注力事業としてロボットSI事業があります。2021年4月には、ロボットベンチャーのKyoto Roboticsが傘下に加わりましたが、どのような期待がありますか。
森田氏 立命館大学発ベンチャーの第1号として2000年に創業したKyoto Roboticsの持つ技術は素晴らしいものがある。実際に、2011年に世界初の産業用ロボットに取り付け可能な3次元ロボットビジョンセンサー「TVS」を開発して、200社以上に採用されるなどFA分野で高い実績を有している。
しかし、ベンチャーの規模感だと企業体力的に対応できないことも多く、ビジネスをスケールし切れないという課題があった。このビジネスをスケールするという点で、日立の力が役立つと考えている。一方、日立にとってもベンチャーのKyoto Roboticsと一緒になるメリットは大きい。日立は、安全や確実ということに重点を置くものの、事業のスピード感が不足しがちだ。現在の産業・流通BUの顧客はスピード感を求めている。もちろん、日立のこれまでのやり方は否定しないが、Kyoto Roboticsのようなベンチャーのスピード感を日立に取り込みたいと考えている。
MONOist 2020年4月には、新たに米国法人のHitachi Industrial Holdings Americasを立ち上げました。同社の役割について教えてください。
森田氏 Hitachi Industrial Holdings Americasは、空気圧縮機事業を手掛けるサルエアー(Sullair)、ロボットSI事業を手掛けるJRオートメーション(JR Automation Technologies)を中核としたJRテクノロジーグループ(JR Technology Group)、日立産機システムの米国法人であるHitachi Industrial Equipment & Solutions Americaという3つの事業会社を統括している。役割としては、私がCSOを務めていたインダストリー事業統括本部と同じく横串を通して連携をとるための組織になる。これまで、3社の事業会社はどうしてもバラバラで活動することが多かったが、Hitachi Industrial Holdings Americasの発足で、より連携のとれた事業展開が可能になる。トータルシームレスソリューションの事業展開もやりやすくなるだろう。
MONOist 北米事業という観点では、買収を完了したグローバルロジック(Global Logic)との連携も不可欠です。どのような展開を考えていますか。
森田氏 グローバルロジックとの連携は、2022年度からの次期中計で重要な課題になるだろう。同社のトップとリモート会議を重ねているところだが、現時点ではまだ互いのことを理解できているとはいえない状況だ。グローバルロジックのビジネスモデルを、どのようにインダストリーセクターと組み合わせられるのか。互いをきちんと理解した上で、効率的にやっていかなければならないので、しっかり議論すべきと考えている。
継続的にビジネスを回すという、本当の意味でのシナジーを出すにはそういった議論を重ねて互いの理解を深めることが必要だ。良くないのは、互いに中途半端に理解することで、いいとこ取りだけしようとして成果が出ないという結果に陥ったりする。もちろん、この議論もスピード感を持ってやるべきことであり、2021年度中をめどに方向性を見定めたい。
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