トヨタ系、日産系、ホンダ系……「ケイレツ」の今とこれから:いまさら聞けない自動車業界用語(17)(3/3 ページ)
今回は日本自動車業界の特徴の1つ、「ケイレツ」について解説します。
部品メーカー視点で見たケイレツ
部品メーカーからすると、これまで通りのケイレツの関係は非常に望ましい発注状況です。安定した売り上げを見通し、開発や量産段階での仕事の進め方もこれまでの方法を踏襲できるためです。自動車メーカーから決められた割り当ての中で、問題が起こらないよう協力しあい、進めていくことを期待できる半面、状況は変わりつつあり、ケイレツに安住し続けることは難しくなっています。
近年では、部品に十分な競争力があれば、自動車メーカーが系列以外からも部品を採用することが増えてきています。電動化でこれまで採用されていた部品そのものがなくなってしまえば、関係性も途切れてしまう可能性もあります。また、プラットフォーム共通化により、採用されれば大規模の受注が得られる一方で、採用されなければ長期にわたり仕事がなくなるリスクも増えています。そして開発のスピードは年々上がり、従来の生産準備では間に合わなくなっています。
何もしなくても次のプロジェクトが決まり、仕事が降ってくる。そんなケイレツの関係はもはや過去のものとなっています。
ケイレツのこれから
CASEという技術革新にコロナ禍が加わり、自動車業界は再編の速度を早めています。日本の自動車業界の躍進の理由となったケイレツもうまく機能すればより競争力を高め、品質やコストなどの競争力の向上につながります。一方で関係性を重視するあまり、業界全体の改革が遅れるのではという懸念も挙げられています。
部品メーカーにとってはケイレツの解消はリスクであると同時にチャンスでもあります。これまでケイレツで培ってきた技術力を生かし、日本、海外を問わず売り込みをかけ、新たな市場を開拓。そしてケイレツ外から受注した仕事の中で新しい技術や仕事の進め方の革新を進め、ケイレツ内にも横展開していく、という機会です。
これまでいわばケイレツの中で「待ち」であった部品メーカーが自ら外へ展開していくことは簡単ではないでしょう。しかしながら、100年に1度の転換期。何もしなくても仕事が入ってくるなんてことはありません。CASEの研究開発は確かに費用がかかり、戦略は大変難しいものになりますが、これから継続して事業を進めるために自動車メーカー、部品メーカー含めケイレツを超えたチャレンジをしていく必要があります。 (次回へ続く)
カッパッパ
ティア1サプライヤーで働く、入社10年を超えた中堅社員。普段は作業服に身を包み、工場と事務所、仕入れ先やお客さんとの間で、汗をかきながら現地現物をモットーに働く。Webでは「ええやん、日本自動車業界」のコンセプトのもと、現場目線で役立つ自動車関連ニュースを幅広くキュレーション。
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