CCSから出た駒、東芝の新濃縮技術が4分の1の省エネと濃縮率2.4倍を実現:FAニュース(2/2 ページ)
東芝が水溶液に含まれる成分や物質(有価物)を抽出する濃縮技術で大幅な省エネを実現するための新規物質を開発したと発表。正浸透膜法に用いる物質で、濃縮技術として一般的な逆浸透膜法と比べて、塩化ナトリウム水溶液を濃縮する際の消費エネルギーが4分の1で済み、濃縮率も2.4倍に向上できたという。
CCSに用いるアミン系物質から着想
実際に、濃度8%(質量体積%)の塩化ナトリウム水溶液を用いた水吸引性能の検証では、被処理液となる塩化ナトリウム水溶液の濃度を19%まで濃縮できることを確認した。なお、逆浸透膜法を用いた塩化ナトリウム水溶液濃縮の限界値が濃度8%とされており、これを大幅に上回ることになる。また、常温における塩化ナトリウム飽和水溶液の濃度が約26%であることからも、この19%という数値が良好であることが分かる。さらに、この19%という濃縮を達成したときの浸透圧物質と水の割合は重量比で1:1だった。実証実験で用いた正浸透膜は、市販されているアクアポリン(AQUAPORIN)製であり、東芝独自のものではない。
一方の分離性能についても、CO2を吸収して均一に溶解している浸透圧溶液を70℃に加温することで、CO2が抜気された後、上層に浸透圧物質、下層に水が分離されることを確認した。このときの分離性能で99%以上を達成したとする。
今回の浸透圧物質の開発は、東芝が手掛けているCCS(Carbon dioxide Capture and Storage:二酸化炭素回収・貯留)技術との関連が深い。CCSでは、発電所や工場、プラントなどで排出されるCO2を吸収する材料としてアミン系物質が用いられるが、このアミン系物質がCO2を吸収するという特性と濃縮技術に応用可能な水処理を絡めて、今回の技術開発に向けたコンセプトの着想を得たという。
なお、新開発の浸透圧物質の詳細については、2021年9月22〜24日に開催される「化学工学会第52回 秋季大会」(岡山大学 津島キャンパスとオンラインのハイブリッド開催)で発表する予定だ。
学会発表されるところから分かる通り、現時点では研究室レベルでの実証実験が終わった段階だ。今後は、小型試験装置による連続運転評価や、化学品や医薬品の製造、廃液処理、レアメタル回収といったアプリケーションごとの実証を進める。実用化については「まずは東芝グループ内のプラントなどで実績を積んだ上で、グループ外に提案していくという流れになるのではないか」(同社)としている。
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