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米国の医療DXを支えるブロックチェーンと分散台帳はオバマ政権時代からの積み重ね海外医療技術トレンド(75)(4/5 ページ)

本連載の第23回や第65回で触れたように、米国の保健医療行政機関がDX(デジタルトランスフォーメーション)施策を本格化させる中、変革ツールとしてブロックチェーン/分散台帳技術が注目されている。

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DSCSAで注目されるブロックチェーン/分散台帳技術

 このようなDSCSAの段階的導入と並行して、FDAは、2016年2月16日に「医薬品サプリチェーン安全保障法に基づくパイロットプロジェクト提案;公開ワークショップ;意見招聘」(関連情報)と題する通知を発出し、パイロットプロジェクト・プログラムを展開してきた(関連情報)。本プログラムは、医薬品サプライチェーンのステークホルダー(FDAを含む)が、米国内で流通する特定の処方箋医薬品を特定し追跡する、電子的で相互運用性のあるシステムを開発する際に支援することを目的としている。なおFDAは、個々のパイロットプロジェクトに要する費用については負担しない。

 表2は、DSCSAパイロットプロジェクト・プログラムに参画しているプロジェクト一覧である。

表2
表2 DSCSAパイロットプロジェクト・プログラムの参画プロジェクト一覧(クリックで拡大) 出典: Food and Drug Administration (FDA)「DSCSA Pilot Project Program」(2019年5月22日)を基にヘルスケアクラウド研究会作成

 このうち、ブロックチェーン/分散台帳技術を利用したプロジェクトは、以下の5つとなっている。

  • IBM/KPMG/メルク/ウォルマート:DSCSAブロックチェーン相互運用性検証試験(関連情報
  • IDLogiq:分散型ヘテロジニアスグローバルネットワークコンピューティング環境向けブロックチェーン/分散台帳技術により強化された取引元帳を装備したIDLogiq次世代先進REAL FIPS(連邦情報処理標準)を順守した暗号ID認証(関連情報
  • MediLedger:MediLedger DSCSA検証試験(関連情報
  • TraceLink:分散台帳によるDSCSAのトレーサビリティーとデジタルリコールプロジェクトの提案(関連情報
  • UCLA:UCLA-LedgerDomain: ブロックチェーン技術を介したDSCSAソリューション(Hyperledgerを採用、関連情報

 上記のブロックチェーン/分散台帳技術利用プロジェクトは、いずれも、DSCSAに関わるマルチステークホルダー型コンソーシアム組織が主体となって実証実験を企画・展開し、その結果を一般向けに公開している点が特徴だ。ブロックチェーンの場合、金融/フィンテック業界におけるオープンソースソフトウェアやオープンコミュニティーを活用したイノベーション活動が、医療/ライフサイエンス業界に波及していった歴史的経緯があり、さらなるイノベーションを誘発させるためにも重要である。

 2023年の電子的で相互運用性のあるシステム導入の義務化に向けて、ブロックチェーン/分散台帳技術の実用化が喫緊の課題となっており、今後の動向が注目される。

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