「見せる」プレゼン資料と「読ませる」配布資料:技術者のための資料作成とプレゼン講座(3)(1/3 ページ)
どんなに素晴らしい内容の発表でも、それが読み手や聞き手にうまく伝わらなければ意味がない。本連載では、技術者の皆さんを対象に、相手に伝わる発表内容の構成や資料の表現方法などについて伝授する。第3回は、資料そのものが持つ内容と意味が変わらずにしっかりと伝わり、独り歩きしないためのプレゼン資料/配布資料の作り方を紹介する。
皆さんが作成した資料は、どのように流通し、どのように使われるのでしょうか? 大切なことは、資料そのものが持つ内容と意味が変わらずに、そのまま伝わることです。そのためには、プレゼン資料と配布資料の作り方を変える必要があります。
今回は、内容と意味が変わらずに伝わる“筆者流”のプレゼン資料と配布資料の作り方を解説します。
役目が異なるプレゼン資料と配布資料
皆さんが作成した資料は、半永久的に残る可能性があります。技術的な資料であればあるほど、その可能性は高くなります。
プレゼン終了後、投影した資料の入手を希望される場合があります。プレゼンを聴講した人がプレゼンの内容を振り返るために、その資料を参考にするのであればほぼ問題はありません。一方で、そのプレゼン資料が稟議(りんぎ)書などに添付されて社内を巡る場合があります。筆者はその状況を「プレゼン資料の独り歩き」と呼んでいます。この「独り歩き」が時にプレゼン内容の間違った解釈を生む可能性があります。その理由は、資料の役割そのものにあります。
プレゼン資料
オンラインでもオフラインでも、プレゼンには聴衆がいます。プレゼンは、時に図解チャートなどのプレゼン資料のビジュアルがメインで発表内容(言葉)はその補助的な役割となり、時にその逆で、発表内容がメインでプレゼン資料がその補助的な役割となります。
つまり、プレゼンという行為は“プレゼン資料と発表内容のコンビネーションで成り立つもの”です。ですから、プレゼン資料のみを配布した場合、内容が間違って伝わる可能性があるのです。
配布資料
配布資料は「独り歩きする」ことが前提といえます。配布資料は、インパクトがメインのプレゼン資料とは異なり、誤解なく内容が伝わる資料でなければなりません。プレゼンのテーマや主義主張が読み手にしっかりと伝わる必要があります。プレゼン資料は“見せる資料”であり、配布資料は“読ませる資料”です。
「PowerPoint」には、プレゼン資料作成の下側に「ノート」と呼ばれるペイン(エリア)があります。発表内容の要約をそこに記入し、プレゼン資料を補足します。プレゼン資料の印刷時にノートを含めることができます(図1)。
資料を配布する場合は、最低でも「プレゼン資料+ノート」とすべきです。ノートの記入に手間と時間はかかりますが、せっかくのプレゼン資料が誤解されるよりマシです。
プレゼン資料と気を付けたいこと
筆者のプレゼン資料と配布資料の“構成”について解説します。
まずは、テーマの基となる構成要素のスライドを作ります。構成要素とは、前回紹介した「松竹梅」や「あいう」「ABC」に当たる部分です。これがプレゼンの骨格になります。また、モジュールの単位にもなります。
筆者が作成するプレゼン用資料には、文章がほとんどありません。「まとめ」のページに箇条書きの文章がある程度です。プレゼン資料のほとんどは、図解やチャートで占めています。これらに関するノウハウは、書籍やWebサイトなどにたくさんの情報がありますので、そちらを参考にしてください。
ここでは、図解やチャートを描く際、特に筆者が注意している点をカンタンに解説します。
細か過ぎる図解やチャートはNG
プレゼン資料で多く見られるのが、とにかく細か過ぎる図解やチャートです。本来、図解やチャートは説明を分かりやすくするためのものですが、文字が小さ過ぎたり、矢印が多過ぎたりしてしまうと、全くの逆効果です。特に、難しい技術的な内容を説明するチャートでは、1枚のスライドに情報を詰め込みがちになります。理解を促すための図解が、逆に理解を妨げることになってしまいます……。
文字が読めないくらい小さい図解やチャートもよく見ます。まず、スライドのサイズですが、筆者の場合は“16:9”のアスペクト比のものを標準サイズとして使用しています。具体的には、PowerPointのメニュー[デザイン]から[スライドのサイズ]−[ワイド画面(16:9)]と設定します。スライドのサイズは、幅33.867×高さ19.05cmです。このサイズだと、スライドショーモードでギリギリ読める文字サイズは12ポイントが限界です。それ以下の文字サイズを使うことは避けましょう。最小文字サイズが決まれば、自ずとスライド内の図形要素密度も決まってきます。
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