バラバラの発想をまとめてテーマを補強する「デザインスゴロク」:技術者のための資料作成とプレゼン講座(2)(1/3 ページ)
どんなに素晴らしい内容の発表でも、それが読み手や聞き手にうまく伝わらなければ意味がない。本連載では、技術者の皆さんを対象に、相手に伝わる発表内容の構成や資料の表現方法などについて伝授する。第2回は、バラバラの発想をまとめてテーマを補強する効果的なアプローチ「デザインスゴロク」を取り上げる。
プレゼン資料で、配色や文字の大きさはとても大切な要素です。このようなデザイン要素に関する技術的な内容は、書籍やWebサイトなどにたくさんの参考にすべき情報があります。
実は、それよりも重要なことがあります。それは「テーマ」です。今回は「テーマ」の補強手段について解説します。
プレゼン資料≠カタログ(プレゼンはカタログじゃない!)
プレゼンの心臓部は「テーマ」と「それをどう伝えるか」ということです。
筆者はこれまでにたくさんのプレゼン本を読み、多くのWebサイトの情報を見てきました。プレゼン資料そのものの構成については、基本的にどの書籍やWebサイトにも記されていますが、「テーマの煮詰め方・追い込み方」が書かれたものはほとんどありませんでした。
テーマにはいろいろなものがあります。
- 製品やサービス
- 課題
- 提案
など……
カタログやWebサイトに書いてあることそのもののプレゼンでは、わざわざお客さまに時間をとっていただいて、プレゼンを行う意味がありません。ほとんどのお客さまは、興味のある製品は既にカタログやWebサイトで十分に情報を収集しています。そのプロセスを経ているからこそ、プレゼンテーションの場を与えていただけたのです。カタログやWebサイトで分かる情報をダラダラとプレゼンしてしまうと、お客さまは心の中で「それは、もう知っているよ……」とつぶやくでしょう。
だからといって製品やサービス、提案の説明が一切なしというのも、また問題です。プレゼンの場には、担当者と「その上司」が出席することが多いのです。その上司はテーマのことを全く知らない可能性があります。その対策として、テーマの重要なポイントを3つ程度にまとめたページを用意しておきます。このあたりは連載第1回で述べた「モジュール化」が役に立ちます。
カタログやWebサイト以外の情報があってこそのプレゼンです。
テーマを支えるための鉄壁なコンセプトが必要です。ところが、いつも理路整然としたコンセプトがあるわけではありません。
ほとんどの書籍では、テーマは全てロジックが完成されているものとして解説されています。テーマに関するロジックやコンセプトは、「ロジカルシンキング」などの手法を使って構築する必要があります。このあたりは別の領域のノウハウになりますので、詳細は控えます。が、しかし……、テーマを深く考え、プレゼンならではの情報の付加価値を構成することは重要です。なるべく短い時間でしっかりと考え、プレゼンのテーマを補強したいものです。
カタログやWebサイトに書かれている情報は、あくまでも「一般論」です。それをテーマに沿うように再構成することによって、聴講者やお客さまにとってより身近なものになります。
自分なりに考えを深めることで、新しい視点が見つかります。それを続けることで、それはあなたのスタイルとなり、提案力となります。
今回は、筆者が以前から使っている「デザインスゴロク」という方法を紹介します。
強制的に「考える」、フレームワーク
自分のアタマで「考える」ことは重要だと、誰もが分かっています。その割には、学校教育を通じて「考え方」そのものを学んだ記憶は、筆者にはありません。欧米の学校では、 論理的思考力、分析力など「○×式テスト」では評価できない教育があるそうです。筆者は今年(2021年)で63歳ですが、少なくとも筆者の時代にはそのような教育はありませんでした。
ですから、筆者は「考える」ことが苦手でした。テーマについて考えても、考えても、テーマから離れて発散してしまったり、いつのまにか別のことを考えてしまったり……。
そういうときにこそ、フレームワークの出番です。
論理的思考や問題解決に対するフレームワークは、本当に多くの情報が既に共有されています。書籍もたくさん出ています。筆者もさまざまなフレームワークを使ってみました。
試した百数十のフレームワークの中で筆者がいまだに使っているものは、2つです。その1つが、今回紹介する「デザインスゴロク」です。
デザインスゴロクには、以下のようなメリットがあります。
- 考えた結果がそのまま図解として資料の中で使える
- 言葉を入れ替えることで、別の切り口に変身できる
- 付加価値がはっきりと提示できる
筆者は、これまで何度もデザインスゴロクに助けられました。
デザインスゴロクの基本コンセプトは、 故・池辺陽氏(東京大学生産技術研究所 建築学 教授)が作られたとのことです。建築学、ロボット工学、都市工学などに応用されているようです。バラバラの発想をシステマティックにまとめるためのツールとして、使われています。
今では絶版になっていますが、30年前に以下のような書籍も出版されています。
それをさらに使いやすくしたものが、デザインスゴロクです。「空欄を埋めなければ図解として成立しない」という強制力が、考えることに集中させてくれます。
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