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相手に合わせた資料構成とモジュール化技術者のための資料作成とプレゼン講座(1)(1/3 ページ)

どんなに素晴らしい内容の発表でも、それが読み手や聞き手にうまく伝わらなければ意味がない。本連載では、技術者の皆さんを対象に、相手に伝わる発表内容の構成や資料の表現方法などについて伝授する。第1回のテーマは「相手に合わせた資料構成とモジュール化」だ。

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はじめに

 筆者はこれまで何度か日本機械学会の講習会で講師を務めたことがあります。その講習会のアンケートの中に変わったリクエストがありました。

発表内容の構成方法と資料の作り方を講義してほしい。

 発表した内容とは全く関係のないリクエストに少々驚きましたが、きっと発表した内容の構成方法と資料の表現方法が分かりやすかったのだろうと、良いように解釈しました。

 技術系の仕事に就いて40年。毎日たくさんの資料を見てきました。そのほとんどが技術系の資料で、コロナ禍の前でも最中でも変わりません。そのような日々を過ごす中、資料に目を通していると「こうすれば、もっと言いたいことが伝わるのになぁ……」と思うことがよくあります。

 発表されている内容は素晴らしいものなのに、それが読み手や聞き手に伝わらないなんて、それほどもったいないことはありません。

 筆者は、資料の構成方法の技能やデザインセンスがあるとは思いませんが、これまで書籍やインターネットでそれなりに情報収集し、それらを基に試行錯誤しながら講演やプレゼン用の資料を作ってきました。

 本連載では、特にMONOistの読者構成で一番多いであろう「技術者」の方々に向けて、資料を作成するための有益な情報を共有しようと思います。「考え方」から「『PowerPoint』の使い方」まで、内容や粒度はさまざまです。ちょっと調べれば分かることもあると思いますが、しばらくの間、どうかお付き合いください。

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テーマを誰に伝えるのか

 当たり前のことですが、資料を作る場合には必ず「テーマ」があります。例えば、ソフトウェアの使い方であったり、自社製品の推しのポイントだったりです。

 ここでハッキリさせておくべきことは、「そのテーマを誰に伝えるのか?」ということです。伝える先(相手)は、大きく分類して次の2つだと思っています。それは「社内」か「社外」かです。この2つが最初の大きな分岐点です。伝えたい内容は同じでも、構成は全く異なります。当たり前ですよね。

 そして、次の分岐点が、読み手/聞き手の「テーマに対する理解度」です。テーマが技術寄りであればなおさらです。ごく一般的な資料の構成を図1に示します。

「当たり前」過ぎる、相手別資料の構成
図1 「当たり前」過ぎる、相手別資料の構成 [クリックで拡大]

 多くの解説は必要ないでしょう。一番カンタンな構成は、社内で技術者相手の資料です。余計な情報は一切必要ありません。そして、一番構成に気を配らなければならないのは、社外で技術的なことを知らない人相手の資料です。

 社外の人となると、協業先や見込み客先の方々が発表の相手となります。先方の性格的な特性はさまざまです。せっかち型の人もいれば、ジックリ型の人もいます。そのタイプはお会いしてみるまで、発表を始めるまで分かりません。相手が社外の技術者であれば、会社情報に興味がないこともあります。

 筆者も経営層の方々を相手にしたプレゼンで会社情報を紹介したら、「そんな所は飛ばしていいから、本論に行ってよ!」とイライラさせてしまった経験があります。

 この経験から以下の鉄則が導かれます。

資料はその場で臨機応変に対応できる構造になっていなければいけない。

 それを可能にする大前提が、「資料項目のモジュール化」です。

 主要な業務、資本金、従業員数、提携企業先などを含む会社情報は、これで1つのモジュールです。モジュール化されていれば、相手の属性に合わせて必要なモジュールを組み合わせれば、1次資料の完成です。これに「飛ばし」機能を付ければ、相手のタイプに合わせて現場調整できます。

 「項目ごとにモジュールを作って組み替える」と書くとカンタンそうに見えるかもしれませんが、PowerPointでは、マスタースライドから丁寧に作り込んでおく必要があります。そうしておかないと、スライドをマージしたときに色が変わってしまったり、フォントの統一感がなくなったり、ガチャガチャとしたツギハギだらけ感満載の資料になってしまいます。このあたりも本連載の中で解説していきます。

 まずは、資料を作成する際に、内容や項目の「モジュール化」を心掛けておくといいでしょう。

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