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自動運転技術の実用化に何が必要なのか、絵に描いた餅で終わらせないためにモノづくり最前線レポート(1/2 ページ)

Skyのオンラインイベント「Sky Technology Fair Virtual 2021」のスペシャルライブ企画に金沢大学 高度モビリティ研究所 教授の菅沼直樹氏が登壇。「自動運転技術の確立に向けて〜自動運転に必要な技術と金沢大学の取り組みについて〜」をテーマに講演を行った。

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 Skyが開催中のオンラインイベント「Sky Technology Fair Virtual 2021」(開催期間:2021年9月10日まで)において、同年8月2日のスペシャルライブ企画に金沢大学 高度モビリティ研究所 教授の菅沼直樹氏が登壇。「自動運転技術の確立に向けて〜自動運転に必要な技術と金沢大学の取り組みについて〜」をテーマに講演を行った。また、菅沼氏に加えて、国際自動車ジャーナリスト/神奈川工科大学 特別客員教授/SIP-adus 構成委員の清水和夫氏、中部大学 工学部 教授の藤吉弘亘氏、Sky クライアント・システム開発事業部の伊神正峰氏が参加し、「実現せよ!完全自動運転〜なぜできない?完全自動運転のシステム課題 必要な技術の全体像〜」と題したパネルディスカッションも実施した。

60年前から始まった国内の自動運転技術研究

金沢大学の菅沼直樹氏
金沢大学の菅沼直樹氏

 講演で菅沼氏は、自動運転技術に必要な技術や金沢大学における研究開発の取り組みについて紹介した。

 国内で自動運転技術の研究が始まったのは60年ほど前からだという。当時はインフラ依存型であり、高速道路などに限られた自動運転が中心だった。現在は、走行空間の自由度が高い一般道での自動運転も含めた自律型の研究が進められており、それはコンピュータ、センサー、AI(人工知能)、高精度デジタル地図などの高度化によるものだ。金沢大学では23年前から自律型の自動運転システムの研究開発をスタートしている。当初の10年間はセンサーの搭載による周辺環境の「認識」から開始し、続いて走行路を定める「パスプランニング」、無人走行へとレベルを上げていった。そして2015年、国内大学として初めて市街地での公道走行実験を始め、その後東京都、石川県、北海道などでも技術検証を行い、6年半で2万km以上の走行実績(時速60kmで走行可能)がある。

 現在の試験車両には、多数のセンサーが搭載されている。周辺環境を認識するLiDAR(Light Detection and Ranging、ライダー)が5台、ミリ波レーダーが9台、カメラが11台で、車両の周辺環境を人間と同じように認識できるようにしている。菅沼氏は「これら多数のセンサーでリアルタイムに認知判断を行うことで、公道における自律的な車両制御まで行えるようになった」と語る。

金沢大学 高度モビリティ研究所で運用している自動運転車両
金沢大学 高度モビリティ研究所で運用している自動運転車両 出典:金沢大学 高度モビリティ研究所 計測制御研究室

 しかし、センサーだけでは自動運転は不可能で、情報処理や移動ロボットの開発技術など幅広い技術を総合して組み合わせることにより、最終的に実現できるようになる。これらの技術のうち、地図と「自己位置推定技術」はデジタル地図に基づいたものだ。「高精度な地図が用意されていれば、地図に沿って自律制御システムがハンドルを切って走行し、目的地に到着するといったことが可能となる」(菅沼氏)という。

 ここで重要なのは、地図上における自己位置を常に正確に把握できていなければ自動運転は不可能だということだ。地図上の正確な位置を求める技術をローカライゼーションといい、GPSを使ったカーナビの技術などあるが、トンネルや高層ビル群が立ち並ぶ場所では高精度な位置を把握できないことから、最近ではGPSに頼らず高精度な位置を求めるようなシステムの搭載が一般的になりつつある。例えば、地図データを使った自己位置推定システムがあり、走行空間の情報をあらかじめセンサーを使って取得しておき、走行中のリアルタイムの情報と照合することで車両の自己位置を高精度に求められる。この技術を活用すればで、トンネルの中でもビルの谷間でも自動走行が可能になる。この地図データはSLAM(Simultaneous Localization and Mapping)という技術を使って地図生成、更新を行うのが一般的だ。金沢大学では、SLAMを用いて、空の上から俯瞰して見たような道路画像を、高精度かつ自動的に求める技術を開発している。

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