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いきなり社長に呼ばれたらDXセキュリティ対策を丸投げされた件事例で学ぶ製造業DXセキュリティ対策入門(1)(3/4 ページ)

中堅化学薬品メーカーのABC化学薬品に勤める新卒入社6年目の青井葵。彼女はいきなり社長室に呼ばれ、社内DXセキュリティプロジェクトチームのリーダーに任命される。それまで社内のセキュリティ問い合わせ担当だった青井にとって、これはいきなり荷が重すぎる! 元工場長の変わり者、古井課長の支援の下、果たしてプロジェクトの命運はいかに!?

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DXセキュリティプロジェクトで一番大事なこと

大丈夫大丈夫。冗談だよ。じゃあ本題に戻ろうか。今回の青井さんのDXセキュリティプロジェクトで、一番大事なことって何だと思う?


一番大事なこと……。愛とか?


なかなか鋭いな。うちのDXプロジェクトは、旧態依然の社内文化の見直しを兼ねているから、どうしても文化の衝突が起こるでしょ。若い人がリーダーやっているのもあって、どこも課題山積なんだよ。そうなると、本来やりたいこととは直接関係ないセキュリティ対策ってどうしても後回しにされがちになる。


はい。私でもそう思います。まずはちゃんと運用開始できるかどうかに集中しちゃいます。


とはいえ、ITの導入でセキュリティリスクが増えるのは当然で、それぞれのDXプロジェクトを安心して進めるためには、適切なセキュリティ対策を並行して考えることが不可欠なんだよ。経営者目線では、自分が将来、株主や世間に謝罪したくないと思うでしょ。このことが分かっている経営者はまだまだ少ないから、黒川社長はさすがなんだけど。


そんな深謀遠慮があったんですね。大黒様見直しました! あっ……。


 思わず、口に出してしまう悪い癖を呪いながら、手で口を覆ったが、課長は、完全スルーで先を続けた。

つまり、このセキュリティプロジェクトは、経営者の視点で、DXプロジェクトを俯瞰して、どんなリスクがあるのかを見極めた上で、それぞれのプロジェクトリーダーとともに、適切な対策を検討して実施するという非常に難しい役割を担っているわけだ。


えー、でも平社員の私には難しすぎます。そもそも私、セキュリティといっても、問い合わせ対応担当ですし。毎日いろんなクレーム受けて、それを調べて、地道に解決することくらいしかできないです。


いや、それが大事なんだよ。このプロジェクトで一番重要になるのは、その共感力なんだ。セキュリティ対策は、リスクが違えば対策も異なるわけで、別に普遍的な正解があるわけじゃない。そうなると、結局、関係者みんなが納得する落としどころを探す必要があるわけだ。


なるほど。そこで愛が必要なわけですね。


その通り。ただ、共感するだけじゃなくて、相手の立場を理解して、それを考慮しつつ、でも経営の視点で必要なことは譲らないといった強さも必要になる。


そういわれると、セキュリティの問い合わせ対応に似ているところありますね。


まあ、もちろん、今のままでできるわけじゃないから、相手の立場を理解するための勉強も必要だ。加えて、自分と異なる文化を受け入れる柔軟性が必要なんだ。そういえば、青井さんラノベ好きだったよね。最近だと異世界ものとか読んでるんでしょ。


 笑いをかみ殺したような課長の表情を見て、全てを悟った。そういうことか。

ひょっとして、私がこのプロジェクトのリーダーに抜てきされたのって、問い合わせ担当で共感力があるとかだけじゃなくて、私が異世界もののラノベが好きで、異文化への理解があるとかそういう理由ですか?


やっぱり共感力高いな。青井さんは。うむ、私の目に狂いはなかった。


……。


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