ニューノーマルで本質的課題解決を実現する「デザイン思考」とそのステップ:ポストコロナの製造業IT戦略(5)(2/3 ページ)
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)がもたらした「withコロナ」のニューノーマル時代において、製造業にどのような変革が必要となるのかを考える本連載。最終回となる今回は、スモールスタートの前提として考えるべき本質的な「課題解決のステップ」について解説します。
「デザイン思考」でイノベーションを生み出す仕組み
次に説明するような枠組みを活用することで、誰でもデザイナーのような考え方で物事にアプローチすることができます。デザイン思考は5段階のプロセスで成り立っています。
- Step 1:共感
- Step 2:問題定義
- Step 3:発想
- Step 4:プロトタイプ
- Step 5:テスト
必ずしも1〜5のステップを一方向に進むわけではありません。場合によってはステップを繰り返し改善することも多くあります。既に欧米諸国ではデザイン思考は問題解決アプローチとしてかなり浸透してきました。
しかし、その概念だけでは、どのようなプロセスになるのかイメージしにくいでしょう。そこで、デザイン思考を適用するためには、プロのファシリテーターがリードする「デザインシンキングワークショープ」を実施することが一般的に最も行いやすい方法だとされています。これはデザイン思考のプロセスをベースにした参加型、体験型のワークショップです。アクティビティーを中心としており、従来は対面でのワークショップで行われていましたが、最近はリモートで行われるケースも増えました。ワークショップの時間は2時間程度から、2日間、まれに1週間にも渡って行う場合もあります。もちろん、内容やゴールによって必要な期間が変わります。ここでは、デザイン思考の発想をより具体的にイメージしてもらうためにワークショップで行うことを参考に紹介します。
デザインシンキングワークショップの流れ
デザインシンキングワークショープは主に以下のようなステップで行います。
- 自己紹介、ブリーフィング
- アイスブレイク(参加者がリラックスできるような簡単なアクティビティー)
- デザイン思考の紹介(デザイン思考の定義や5つのフェーズ、メリットやケーススタディーなどを説明)
- みんなで共感を作る(Step 1:共感)
- 問題を具体化する(Step 2:問題定義)
- 解決するソリューションの形を決める(Step 3:発想 パート1)
- ユーザージャーニーマップを作る(Step 3:発想 パート2)
- プロトタイプ作成とそれを使ったテスト(Step 4:プロトタイプとStep 5:テスト)
- 次のステップのアウトラインを考える
「Step 1:共感」では、「共感」とは何かを説明し、状況設定を用意して、その中で自分がエンドユーザーであると想定し、どのように感じるのかを体験するアクティビティーを行います。参加者がホワイトボードを「言う」「考える」「やる」「感じる」の4つに分類します。アクティビティーで観察した結果を、それぞれの領域にユーザーの立場になったと仮定しながら埋めていきます。こうして、エンドユーザーのニーズを理解することがデザインシンキングワークショップの重要なメッセージになります。参加者全員がエンドユーザーの立場になって、何を必要とするか、何が欲しいかを真剣に考えます。
「Step 2:問題定義」では、共感マップをベースにそれぞれの見解を述べるアクティビティーを行います。この見解には特別なユーザーやそのニーズ、各自の洞察などを含みます。これらの要素を踏まえて、問題の再構成を行います。問題に対して「なぜ」の質問を投げます。各参加者が、なぜそのような結論になるか、なぜこの問題にフォーカスするのかに関して議論を行います。
「Step 3:発想 パート1」では、ここまでで出てきた問題に対し、可能性が高いソリューションの形を作っていきます。まず「考えられる最悪のアイデア」アプローチで、アクティビティーを行います。グループとして問題に対して、最も事態を悪化させるアプローチ方法や解決手法について共通理解を作ります。次にこの最悪の手法に対し、妥当性のあるソリューション方法を考えてみます。最悪のアイデアを先に出したことにより、問題点の見極めがやりやすくなり、円滑に議論が進むはずです。これらを経て、ユーザーの観点から気づいたことやチームメイトからのフィードバックなどを総合的に捉え、新たなソリューションの形を創造します。このステップでは、言葉で表現しようとすれば現実に流される可能性もあるため、可能な限り言葉ではなくビジュアルで描くことを勧めています。
「Step 3:発想 パート2」では、これらのソリューションの適用を具体的に実施するために、ユーザーの行動に合わせてタイムラインごとに検証するステップとなります。具体的にはユーザージャーニーマップを作ります。アクティビティーでは、特に欲望や痛みにフォーカスして経験するようにします。ユーザージャーニーにはどのようなステップが含まれているかを考えてまとめます。そして、ユーザージャーニーのステップをグループ化していきます。各ステップ、グループのゴール、進めない原因や理由を書き出し議論を行います。
「Step 4:プロトタイプ」と「Step 5:テスト」では、ユーザージャーニーを実際の機能として落とし込みます。まず、参加者のスケッチに機能追加などを行います。例えば、ボタンを追加して機能を追加するアクティビティーを行います。さらに、良かった点、改善できる余地がある点、質問、追加アイデアなどのフィードバックを受けて、付箋、ホワイトボードで記録していきます。それぞれのアイデアに対して、フィードバックが終わったら、その中でベストなアプローチを決めます。
これらのワークショップでの手法などを生かし、「デザイン思考」を活用することで、企業内の課題とその解決手法についての正しい見極めができるようになります。ここで生まれた解決方法を、より早く現実に落とし込むために、前回紹介したスモールスタートなどを使うという全体像となります。こうしたサイクルを高速で回すことができるようになれば、課題解決に直結するデジタル化を企業内のさまざまな場所で生み出すことができるようになります。
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