2021年上期の新車生産は2019年比13%減、変異株や半導体不足で回復半ば:自動車メーカー生産動向(3/4 ページ)
2021年1〜6月(上期)の自動車産業は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大による世界的な市場低迷から着実に回復している様子が伺える結果となった。日系乗用車メーカー8社の2021年上期のグローバル生産は、全社が前年実績を上回り、8社合計では前年同期比30.0%増と2桁パーセント増となった。
日産
日産自動車の2021年上期のグローバル生産台数は、前年同期比28.0%増の186万8640台と4年ぶりに前年実績を上回った。前年がCOVID-19感染拡大により生産停止などを実施した影響が大きい。ただ、2019年上期と比較すると24.2%減と大幅に少なく、日産の生産能力を考慮すると決して十分な台数とは言い難い。
国内生産は同22.5%増の28万4597台で4年ぶりのプラス。国内向けでは主力モデルの「ノート」が新型車効果でプラスとなった。輸出も北米向けがけん引して同49.8%増と大幅に増加した。ただ、半導体不足の影響が大きく、ノートも1〜6月の国内販売は同12.4%増と、前年のコロナ禍や新型に切り替わった直後という状況を考えると伸び悩んでいると言わざるを得ない。海外生産は同29.0%増の158万4043台と4年ぶりの前年超えとなった。国別では、米国が同45.7%増、メキシコが同46.2%増、英国が同24.2%増など大きく台数を伸ばした。COVID-19感染拡大からの回復が早かった中国も同12.4%増と2桁パーセント増を確保した。
足元の回復も着々と進んでいる。6月単月のグローバル生産は前年同月比14.9%増の29万6415台と7カ月連続で前年実績を上回ったが、2019年と2021年の比較では21.1%減と低迷した。COVID-19感染拡大で前年実績が著しく低かったことや、コロナ前の2019年6月は前会長のカルロス・ゴーン氏による拡大路線を引きずっていたことが背景にある。
このうち国内生産は前年同月比42.5%増の3万5586台で5カ月連続のプラス。国内向けノートの販売増の他、北米向け輸出が前年のコロナ影響や新型「ローグ」の好調などで同4.6倍と、国内生産の回復をけん引した。海外生産は、同11.9%増の26万829台と7カ月連続のプラス。前年の反動で北米が同29.4%増、英国が同83.7%増と回復を見せたが、前年がすでにコロナ禍から回復していた中国は同18.8%減と3カ月連続のマイナスだった。
スズキ
上期で最も回復を示したのがスズキだ。2021年上期のグローバル生産台数は、前年同期比48.8%増の148万4525台と3年ぶりにプラスへ転じた。このうち同社生産の半数を占めるインドは、前年がCOVID-19感染拡大によるロックダウンなどを実施していた反動により、同85.9%増の86万7843台と大幅に伸長し、3年ぶりのプラス。その結果、海外生産も同71.4%増の103万3195台と3年ぶりに増加した。
国内は同14.3%増の45万1330台と4年ぶりにプラスへ転じた。ただ、14%増という実績は、前年が完成検査問題対策で工場のラインスピードを落としていたことや、COVID-19の感染拡大で海外からの部品調達に支障をきたし稼働停止を余儀なくされていたことを考慮すると、十分な伸びとは言い難い。半導体不足を理由に4、5、6月と生産調整を実施した影響が出ている。
半導体の影響は6月単月の実績を見るとより顕著に表れている。国内生産は前年同月比25.2%減の6万2250台と4カ月ぶりのマイナスで、8社の中で前年割れとなったのは唯一スズキだけだった。前年6月が国内販売や欧州向け輸出などが好調だった反動に加えて、半導体不足により相良工場、磐田工場、湖西工場で最大9日間生産を停止したことが大きく響いた。
一方、海外生産は好調で、同200.0%増の19万5743台と5カ月連続で増加した。海外生産が前年対比で倍増したのはスズキのみだ。特にインドの伸びが著しく、前年の生産停止の反動の他、5月に変異株の感染拡大で工業用酸素を医療向けに提供するために半月以上稼働停止した後の挽回生産や、例年6月に実施する工場のメンテナンスを5月に前倒ししたことなどが重なり、同226.2%増と急伸。6月としての過去最高も更新した。インド以外の海外生産も前年同月比で2倍と好調だった。その結果、グローバル生産台数は、同73.8%増の25万7993台と5カ月連続で増加。国内生産とは反対に、8社の中で最も高い伸びを示す結果となった。
マツダ
マツダの2021年上期のグローバル生産台数は、前年同期比23.5%増の60万2790台と3年ぶりの増加となった。けん引したのは国内生産で、同43.3%増の41万8604台と2年ぶりにプラスへ転じた。輸出が同54.8%増と好調に推移したことが要因だ。地域別では、最大市場の北米が同54.3%増、欧州が同28.4%増、オセアニアが同114.8%増と主力市場がそろって大幅に増加した。ただ、国内販売は同1.3%増で、このうち登録車は0.1%減と前年並みにとどまった。国内生産を車種別に見ると、主力モデルの「CX-5」が同51.8%増とけん引。「マツダ3」も同39.7%増、「CX-30」も同20.0%増と好調に推移した。
一方、海外生産は同6.1%減の18万4186台と3年連続で前年実績を下回った。上期は全体的に海外生産の回復が進んでおり、8社で前年割れとなったのはマツダのみだった。要因はいち早く市場回復が進んだ中国で、「マツダ6」や「CX-4」の需要減退に合わせて減産したため同16.6%減の8万5897台と、8社中唯一のマイナスだった。メキシコは前年がコロナ禍で3月末から5月末まで生産調整を実施したため同10.5%増と増加した。タイはCOVID-19感染拡大からの回復が進んでいるものの、2021年3月末でピックアップトラック「BT-50」の生産を終了した影響で同4.6%減と減少した。
6月単月のグローバル生産台数は、前年同月比38.3%増の9万8919台と4カ月連続でプラスとなった。国内生産が同111.7%増の7万2350台と大幅に伸長し、4カ月連続で前年実績を上回った。国内販売は伸び悩んだものの、輸出が同78.2%増と好調で、北米が同47.6%増、欧州が同107.7%増と主要市場向けが伸びた。国内生産の車種別ではCX-5が同111.4%増、マツダ3が同220.9%増、CX-30が同306.8%増と主力車種が好調だった。
一方、厳しいのが海外生産で、同28.8%減の2万6569台と2カ月連続のマイナス。タイは前年に12日間工場を停止した反動で同13.9%増と増加した。ただ、メキシコがトヨタ向けOEM(相手先ブランドによる生産)車の生産を2020年11月に終了した影響で同4.5%減。中国はマツダ6やCX-4の販売減少により同49.0%減と半減し、中国で生産する日系メーカー5社で最も大きな落ち込みとなった。
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