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【トラブル8】樹脂製ケースの合わせがズレる!? 樹脂部品の合わせ対策2代目設計屋の事件簿〜量産設計の現場から〜(8)(1/2 ページ)

量産樹脂製品設計の現場でよくあるトラブルを基に、その原因と解決アプローチについて解説する連載。第8回は、樹脂製ケースの上下パーツの合わせ部分でズレが生じた場合の対策方法を詳しく解説する。

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 皆さん、こんにちは! モールドテックの落合孝明です。本連載「2代目設計屋の事件簿〜量産設計の現場から〜」では、量産樹脂製品設計の現場でよくあるトラブルを基に、その解決アプローチについて詳しく解説していきます。

 それでは早速、今回の相談内容を見ていきましょう。

⇒「連載バックナンバー」はこちら

相談内容

樹脂製のケース(上下)を射出成形で成形したのですが、ケースの合わせ部分がズレてしまいます(図1)。ズレの原因とその対策を教えてください。

射出成形でケースを成形したところ、上下の合わせ部分がズレてしまいきれいにはまらない……
図1 射出成形でケースを成形したところ、上下の合わせ部分がズレてしまいきれいにはまらない…… [クリックで拡大]

筆者の所見

 今回の相談内容のように、樹脂部品同士の合わせがズレてしまうことはよくある現象です。設計上はきれいに合わさっている製品でも、実際に成形してみると樹脂の“収縮率”の関係でズレてしまうことがあるため、樹脂部品の合わせ対策が必要になります。

 対策として、まずは各部品への反り対策が必要になります。「反り」とは、製品が内側や外側に反ってしまう現象のことをいいます。反りが生じた製品は、本来ほしい形状ではありませんので、残念ながら“不良”となります。反りについては、【トラブル4】射出成形した製品が反ってしまった!! その原因と対策アプローチで詳しく説明しているのでそちらをご参照ください。

 ただ、各部品に反り対策を施したとしても、やはり収縮が生じますので部品を合わせた際にどうしてもズレてしまうことがあります。また、部品が合わさる部分というのは、その製品の外観イメージを左右する重要な要素の1つでもありますので、部品の合わせがズレていると外観不良となってしまいます。

 この問題を回避するには、樹脂部品の合わせ対策を確実に“製品設計に織り込む”ことです。また、今回のように成形時の段階でズレてしまうと、金型の修正が必要になります。手間もコストもかかる金型修正のリスクを避ける意味でも、ズレ対策(樹脂部品の合わせ対策)は製品設計の段階で実施すべきです。

樹脂部品の合わせ対策:その1

 それでは、今回の相談内容の形状(図1)で樹脂部品の合わせ対策をしていきましょう。

 まず、このような部品同士を組み付けるときには、ボルトやスナップフィットなどで締結するのが一般的で、この締結がしっかりとできていればズレは回避できそうです。しかし、実際には、樹脂は成形時にそれぞれの部品ごとに収縮しますので、きれいに合わせるのは非常に難しいといえます。また、今回の断面のように合わせ部分を単純に面で当てるだけですと、構造上、非常にズレやすくなりますので、製品を合わせたときにズレるリスクはとても大きいです(図2)。

単純な合わせだと収縮の関係でズレる可能性が高い
図2 単純な合わせだと収縮の関係でズレる可能性が高い [クリックで拡大]

 このズレを回避するには、合わせ部分を単純に面で当てるのではなく、“互い違いの形状”にします(図3)。これであれば、相手部品にはまり込むような形状になりますので、ズレを矯正することが可能です。

合わせ部分を互い違いの形状にしてズレを矯正する
図3 合わせ部分を互い違いの形状にしてズレを矯正する [クリックで拡大]

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