熱電発電で走る「国内初」の自律ロボット、燃料はカセットボンベ:ロボット開発ニュース
ダイニチ工業は、東京大学、産業技術総合研究所、KELKと共同で、カセットボンベを燃料とする「熱電発電システムを用いた自律ロボット」を開発した。熱電発電システムを用いて自律ロボットを駆動する技術は「国内初」(ダイニチ工業)。同システムの発電量は可搬型として国内最高レベルの70Wを達成したという。
ダイニチ工業は2021年7月26日、東京大学、産業技術総合研究所、KELKと共同で、カセットボンベを燃料とする「熱電発電システムを用いた自律ロボット」を開発したと発表した。熱電発電システムを用いて自律ロボットを駆動する技術は「国内初」(ダイニチ工業)。同システムの発電量は可搬型として国内最高レベルの70Wを達成したという。同日には、福島県大熊町でロボット駆動の実地走行テストも行った。
開発した自律ロボットは、カセットボンベのガスを燃料とする触媒燃焼で高効率な発電を行える熱電発電システムを搭載している。外形寸法は幅45×奥行き52×高さ52cm、重量は約30kg。位置情報センサーやカメラを搭載しており、あらかじめプログラムされたルートに沿って無人で走行し、線量計によってロボット周囲の放射線量を計測する機能を備えている。
熱電発電システムの発電量は、可搬型として国内最高レベルの発電量となる70Wを達成している。化学反応によって炎が出ない燃焼を行う触媒燃焼を用いているため、発電時の騒音も小さく、一酸化炭素や窒素酸化物の排出もないという。
ロボットの駆動時間は、カセットボンベ2本搭載で約6時間、同4本搭載で約12時間、同8本搭載で約24時間を実現した。なお、リチウムイオンバッテリーを搭載する同様の性能を持つ自律ロボットの駆動時間は約8時間となっている。カセットボンベは軽量であるため、リチウムイオンバッテリーとは違って搭載本数に比例して駆動時間を伸ばせる点が優位性になっている。また、2021年9月に予定しているシステム改良によって駆動時間を約3.3倍にできる見込み(カセットボンベ2本搭載で約20時間、同4本搭載で約40時間、同8本搭載で約80時間)。
主な用途としては、狭小空間や危険地区など人が入れない場所の探索を想定している。カセットボンベを複数本搭載することで駆動時間を大きく伸ばせるため、従来のリチウムイオンバッテリー搭載ロボットよりも探索範囲の拡大が期待できる。
福島県大熊町での実地走行テストは、福島第一原子力発電所の事故で帰還困難地域に指定されたエリアで実施。1.8kmの道路を1時間20分かけて自走し、ロボットに搭載した線量計で周囲の放射線量を測定、記録した。
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