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1.6リッターターボと4WDで白熱したWRCは、PHEVと合成バイオ燃料で新時代へモータースポーツ超入門(8)(1/3 ページ)

最高速度は時速200kmを超え、ドリフトしながらコーナーを駆け抜ける。コースによってはジャンピングスポットも存在し、レーシングカーが空を舞う姿は圧巻だ。大自然の中も疾走するのがWRCの醍醐味(だいごみ)であるだけに、来シーズンからはプラグインハイブリッドシステムを採用するなど環境技術の導入も推し進めている。自動車の環境調和と持続可能性を追求する、「WRC新時代」がやってくる。

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 アスファルトの舗装路や土や砂利が入り交じる山道、凍った轍(わだち)の残る雪道など、一般道を封鎖してタイムを競う自動車ラリーの世界最高峰が「世界ラリー選手権(WRC=ワールドラリーチャンピオンシップ)」だ。

 最高速度は時速200kmを超え、ドリフトしながらコーナーを駆け抜ける。コースによってはジャンピングスポットも存在し、レーシングカーが空を舞う姿は圧巻だ。大自然の中も疾走するのがWRCの醍醐味(だいごみ)であるだけに、来シーズンからはプラグインハイブリッドシステムを採用するなど環境技術の導入も推し進めている。自動車の環境調和と持続可能性を追求する、「WRC新時代」がやってくる。


トヨタガズーレーシングが走らせる「ヤリスWRC」。エンジンの最高出力は380馬力以上、最大トルクは425Nm以上に達する(クリックして拡大)出典:トヨタ自動車

→連載「モータースポーツ超入門」バックナンバー

一般道を封鎖したスペシャルステージで、1台ずつのタイムアタック

 WRCがスタートしたのは今から48年前の1973年のことだ。1911年から開催されている「ラリー・モンテカルロ」やアフリカ・ケニアを中心に行われる「サファリラリー」、ラリー・モンテカルロに次ぐ歴史を持つ英国の「RACラリー(ウェールズ・ラリーGB)」など、それまで世界各地域で個別に行われてきたイベントを国際自動車連盟(FIA)の下で統括する形で一本化し、世界最高峰の自動車ラリーとして誕生した。

 欧州を中心に行われるWRCだが、アフリカや中南米、オセアニア、アジアなどでも開催されており、2004年には日本でも「ラリー・ジャパン」として北海道で初めて開催された。2020年には愛知県で10年ぶりに開催される予定だったが、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響で中止に。2021年は11月11〜14日に愛知・岐阜で行われる予定となっている。

 FIAが統括する世界選手権はF1(フォーミュラ・ワン)やWEC(世界耐久選手権)などあるが、WRCを特徴づける決定的な違いは、アスファルト舗装路(ターマック)だけでなく、未舗装路(グラベル)、雪道(スノーやアイス)も走る点にある。こうした一般道を封鎖して作られる「SS(スペシャルステージ)」でタイムを競うのがWRCのルールだ。1台ずつ走るのもWRCならでは。イベントによってはスタジアムなどに周回コースを設け、2台のマシンが併走してタイムを競う「SSS(スーパースペシャルステージ)」が設定されることもある。

 WRCはSSでのタイムアタック競技となるため、SSとSSの間の移動区間(リエゾン)は一般車と同様に交通法規を守って走行することになる。かつて、このリエゾン区間でスピード違反を犯し、開催国の地元警察に捕まってしまう事例も起きている。ただ、一般道を走るリエゾン区間だけに、例えば中山間部では、地元に住む高齢者が沿道に椅子を出して応援する姿などほほえましい光景も見られる。サーキットとは異なる応援スタイルがあるもの、一般道を使うWRCならではの特徴といえるだろう。

 WRCはドライバーとコ・ドライバー(ナビゲーター)の2人1組のペアで戦うのも特徴だ。事前に調べたコース情報を記したペースノートをもとに、コ・ドライバーがドライバーに次のコーナーの特徴を知らせる。コーナーの角度や向き、長さ、ライン取りといった情報に沿って、ドライバーはコースアウトしないギリギリの限界スピードでマシンを操縦するわけだ。


舗装路、未舗装路、スノー路面もドリフトで駆け抜ける。写真はヒュンダイの「i20クーペWRC」(クリックして拡大)出典:ヒュンダイ・モータースポーツ

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