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「工場の生産性向上」と一言でいっても、幾つものアプローチがあるいまさら聞けない自動車業界用語(15)(2/3 ページ)

今回のテーマは「工場の生産性改善」です。日々進められている工場の改善。具体的にどのように取り組んでいるのかについて説明します。

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たった数分間のチョコ停も無視できない

 ドカ停だけでなく、トラブルによって一時的に設備や製造が停止する「チョコ停」を少なくすることも生産性の向上につながります。チョコ停は1回の停止が数分程度で、ドカ停と比べれば、大したことがないように見えますが、1日に複数回発生することが多く、積み上げると多くの非稼働時間を生み出していることがあります。

 チョコ停対応者のほとんどは現場の作業者であり、記録に残らないことも多く、問題はなかなか顕在化しにくい特徴があります。チョコ停をなくすためには起きている問題を見える化すること、実際に工場のラインを現地現物で確認することが改善のスタートになります。

表1:チョコ停の要因の例
項目 件数 比率
センサー検出エラー 80 48%
治具位置エラー  38 72%
搬送停止 24 86%
印字エラー 15 95%
QR読込エラー 8 100%
合計 165 -

 チョコ停の要因としてよくあるのは、センサーによる位置検出のエラー、治具に加工品がうまくはまらない、搬送途中で加工品が止まる、印字が認識されない……といったケースがあります。

 これらの問題がどれくらいの頻度で起きているのか現状を把握し、QC7つ道具の1つである「パレート図」を用いて問題の大きい要因から対処していくことが、チョコ停解消への近道になります。


表1に基づくパレート図。さまざまなエラーの中で、センサーの検出エラーの頻度が高いことが分かる(クリックして拡大)

ラインを止めない段替えも

 段替え時間の短縮も、非稼働時間を減らす重要な活動の1つです。少量多品種の生産が増える中で、1つのラインで同じ製品を流し続けるのではなく、違う製品を流すために設備の金型や治工具、プログラム、基準位置の調整を変える作業である「段替え」は数多く行われ、その累積時間は大きくなっている場合が多いからです。

 段替えを行う際にラインを止める「内段替え」の場合は、生産することができず非稼働時間になってしまいます。ラインを止めずに準備を行う「外段替え」へ移行する、また「内段替え」にかかる時間そのものを少なくする改善を行うことで段替えの非稼働時間を減らすことができます。

不良率を減らすことも生産性向上だ

 不良率の改善も出来高アップにつながります。ラインで生産したものが品質不具合などでNGとなってしまえば、その分時間当たりの生産出来高は下がります。また、そうした不良品はスクラップとなってしまうため、歩留まりも下がり、工場としては大きな損失につながります。

 不良品をなくす場合もチョコ停対策と同様に、どのような不良が起きているのか記録し、「パレート図」を用いて改善していくことで、いち早く効果を得られます。また「直行率」と「良品率」で管理することも重要です。

 「直行率」とは製造ラインで流した製品が良品である割合です。「良品率」は直行率に加え、製造ラインで不良品だった製品を手直しして良品となったのを含めた指標です。手直しは追加工数がかかるため、工場全体の生産性を下げてしまいます。直行率をいかに上げるかが工場の生産性改善を行う上で重要なのです。

サイクルタイムも短縮の余地

 生産出来高を上げる別の方法として、サイクルタイムの短縮があります。製品ができるまでの時間を短縮することができれば、時間当たりの出来高を増やせます。

 多くの製品の場合、加工工程は幾つかに分かれており、その内で最も生産時間のかかるボトルネックの工程がラインのサイクルタイムとなります。A工程が20秒、B工程が25秒、C工程が30秒、D工程が25秒の場合、一番遅いC工程の30秒がラインのサイクルタイムです。加工プログラムの修正、新しい加工設備の追加などC工程の時間短縮によって、ライン全体の出来高を上げることができます。ただ設備を追加するということは投資ですので、見合うだけの効果があるのか十分に検討する必要があります。

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