日本の伝統を受け継ぐ仮想環境「箱庭」でIoTシステムの統合開発を加速する:仮想環境を使ったクラウド時代の組み込み開発のススメ(2)(1/3 ページ)
IoT/クラウドロボティクス時代のシステム開発を加速化する仮想環境の活用について解説する本連載。第2回は、IT分野と組み込み分野の相克を乗り越えて、IoTのシステム開発/サービス構築をスムーズに進めるための「箱庭」を紹介する。
IoT(Internet of Things、モノのインターネット)は情報技術(IT)の総合格闘技です。情報技術のさまざまな分野それぞれの英知を結集して、大規模なIoTシステムを構築する必要があります。前回の記事では、IoTシステムの開発やIoTサービスの構築の際に考慮すべき課題や技術的背景について整理し、IT分野と組み込み分野における開発方針やアプローチの違いについて解説しました。
今回は、このIoTシステム開発/IoTサービス構築における課題を克服するために、筆者らが2019年から研究開発に取り組んでいる「箱庭」について紹介します。
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「箱庭」とは何か、コンセプトとできること
箱庭は、「箱の中に、さまざまなモノをみんなの好みで配置して、いろいろ試せる!」をコンセプトとして産まれた、IoT/クラウドロボティクス時代のシステム開発を担う新たな仮想シミュレーション環境です。仮想環境である箱庭上にさまざまなソフトウェアやサービスを持ち寄って、机上で実証実験できる場を提供します。
想定している利用シーンは、さまざまな分野から技術者が集まるIoTや自動運転システムの開発現場です。箱庭でのシステム検証を構成する要素である「アセット」を差し替えることで、システム環境の視点(評価観点)や抽象度を、各技術者の分野や立場に応じた任意の精度で切り替えられるようにします。そして、「箱」の中では、IoTの各要素が連携する複雑なシステムの事象や状態を、シナリオに応じて同じ挙動で再現できるようにします。
なお、箱庭の語源は、名園や山水を模したミニチュアの庭園に由来します。盆景や盆栽に類するもので、江戸時代後半から明治時代にかけて流行したといわれています。
詳細な説明に入る前に、現在の箱庭で何ができるのかを直感的に紹介した以下のコンセプトムービーをご覧ください。
まずは、実習フィールドである箱の中に、検証対象とするロボットを自由に配置します。そして、ロボットおよびその内部におけるモジュール同士の通信構成を、GUIツールで設定していきます。配置や通信設定が完了したら、IoTシステム全体での検証実験を開始します。検証動作の最中には、箱の中のロボットの振る舞いとともに、モーターの指令値やセンサーの検出値などの内部状態や通信パケットのデータをリアルタイムに確認することができます。想定していた挙動が実現できなかった場合には、制御プログラムの実装を修正して、その検証結果を改めて何度でも確認することができます。
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