次世代TransferJetと自律ロボットで協働型見廻りシステム、伝送速度は5G並み:ロボット開発ニュース
情報通信研究機構とソニーセミコンダクタソリューションズは共同で、自律移動サービスロボットによる協働型見廻りシステムを開発した。免許不要の次世代通信技術「TransferJet X」を利用し、短時間、非接触で巡回データの収集と配信ができる。
情報通信研究機構(NICT)は2021年6月9日、ソニーセミコンダクタソリューションズと共同で、4Kカメラを搭載した自律移動サービスロボットによる協働型見廻りシステムを開発したと発表した。
同システムは、免許不要の次世代TransferJet通信技術「TransferJet X」を利用することで、立ち入り困難で通信インフラ敷設が難しい場所でも、短時間かつ非接触で巡回データの収集と配信ができる。
TransferJet Xは、国際標準規格「IEEE 802.15.3e」をベースとし、無線免許のいらない60GHz帯(ミリ波)を利用する近距離高速無線通信技術。接続に必要な時間は2ミリ秒以下、通信速度は最大13.1Gbpsだ。
同システムでは、見廻り依頼者が無線デバイスから自律移動サービスロボットへ見廻りを依頼すると、付近のロボットが見廻り場所まで移動し、搭載する4Kカメラで撮影を開始する。見廻りが終了すると、ロボットが依頼者の元まで向かい、TransferJet X経由で再生装置へデータを無線伝送し、自動再生する。
実証実験では、依頼者から86.8m離れた場所で約1分間撮影し、約10GBのデータを取得。その後ロボットは、移動時間129秒、伝送時間34秒の計163秒で依頼者へデータを届けた。これはデータ転送速度に換算すると514Mbpsで、5Gを用いた技術規格上のデバイス間最大スループット(480Mbps)と同程度の速度に相当する。
また、数百mの範囲内にある2台のサービスロボット間で協調動作し、見廻り場所に近い方のロボットに作業を依頼したり、ロボット同士が待ち合わせをして撮影データを受け渡しできることも確認した。
今後は、オフィス、ホテル、病院、駅や商業施設など、実環境における実用性を検証する予定だ。
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