“柔軟に変化する生産ライン”のカギであるAGV、その価値と課題:いまさら聞けないスマートファクトリー(9)(3/4 ページ)
成果が出ないスマートファクトリーの課題を掘り下げ、より多くの製造業が成果を得られるようにするために、考え方を整理し分かりやすく紹介する本連載。前回から製造現場でつまずくポイントとその対策についてお伝えしていますが、第9回では、マスカスタマイゼーション実現のカギとみられる無人搬送車(AGV、AMR)について取り上げます。
AGVが効果を生むポイント
なるほど。自律移動がポイントというわけですね。導入についてのポイントはありますか。
そうねえ。いくつかあるけど、一言でいうとすると「“前後のつながり”で本当に費用対効果が生み出せるのかを検討する」ということかしら。
“前後のつながり”というのはどういうことですか。
当たり前だけど「搬送」というのは、どこかで何かを受け取って、それをどこかに運び、受け渡すという一連の作業よね。「運ぶ」という作業の他に正しく「受け取る」「受け渡す」という作業が必要で、それをAGVやAMRに行わせる仕組みが必要になるわ。こうした前後も含めた一連のソリューションを構築しても費用対効果を得られるのかということを考えるべきだということよ。
なるほど。確かに搬送だけ効率化しても前後が人手でボトルネックが生じては意味がないですもんね。
この「受け取り」と「受け渡し」は自動化が難しい領域で、苦慮するケースが多いのよ。受け渡し型、受け取り側に専用の装置などや仕組みを導入するパターン、AGVに協働ロボットを搭載するなど移動体側に新たな仕組みを組み込むパターン、一部で難しい作業は人が支援するパターンなどが考えられるわね。
AGVにどのように運ぶものを受け渡し、受け取るのかというのは悩ましいところです。実際に搬送は自動化されているものの、受け渡しは人が行うためモノが滞留するボトルネックになってしまっている場面もよく見られます。
例えば、自動倉庫システムと組み合わせて使うような場合は、自動で受け渡す仕組みを作り込めるために円滑に行えますが、その場合は、仕組みが大掛かりになりトータルでの費用は大きくなります。また、受け取りや受け渡しの機能をAGVに担わせるために協働ロボットを搭載した「モバイルマニピュレーター」なども注目されていますが、こちらも生産性の面、費用対効果の面で適用の難しい場合が存在します。人手の方が効率的で費用も安いということになりがちです。
結果として、受け渡しや受け取りの一部を人手で行ったり、動力を使わないからくり装置により行ったりするケースが現状では多いように感じています。AGVで担わせる搬送量が増えてくれば、前後の仕組みを作り込んでも費用対効果を得られることから、鶏が先か卵が先かという話になりそうですが、現状では試験的に数台を活用するケースが多いことから、負荷の少ない“前後のつながり”が好まれているということがいえそうです。
確かにそうですね。うちもそれほど大きな規模では導入できないと思うので、負荷を小さく、作業同期性などが厳しく問われないところから導入しようかな。
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