ソニーが本気で取り組む自動車開発、間近に見たケータイの勢力図変化が背景に:車両デザイン(2/3 ページ)
さまざまな分野で「モビリティ」への関心が高まる中、自動車技術会では今回初めて自動車業界以外の企業による基調講演を開催。ソニーグループでAIロボティクスビジネスを担当する執行役員の川西泉氏が、VISION-Sの開発秘話やモビリティビジネスへの参入を決めた背景などを語った。
安心安全を第一に、エンターテインメントやアダプタビリティを
ソニーはVISION-Sの開発にあたり、「セーフティー」「エンターテインメント」「アダプタビリティ」という3つのコンセプトを掲げている。セーフティーについては、「モビリティについて最も大切なのが安心安全。近い将来実現する自動運転の根幹は安心安全が支えている」(川西氏)といい、ソニーのイメージセンシング技術を活用してこれを実現すると説明した。
具体的には、ソニーの車載向けCMOSイメージセンサーを中心に合計40個のセンサーを車内外に搭載。イメージセンサーは18カ所、ライダーは前後4カ所、レーダーおよび超音波センサーは18カ所というシステムで構成した。これにより車両周囲の360度センシングやドライバーモニタリングを実現している。
イメージセンサーはデジタルカメラやスマートフォン用に開発した技術を基に、より条件の厳しい車載向けに開発。ハイダイナミックレンジ機能によりトンネル出口などの逆光でもくっきりと撮影できるほか、カメラ撮影が苦手とする高速点滅するLED信号の対策も行った。車内のモニタリングでは物体との距離を測定するToF(タイム・オブ・フライト)カメラを採用。顔認証で最適な環境を提供するほか、ハンドジェスチャーで各種機能を呼び出すことができる。
なお、現在の仕様は自動運転「レベル2プラス」相当だが、将来的にはソフトウェアのアップデートにより自動運転「レベル4」への発展を見据えており、レベル4に対応できる「センサーレイアウトとシステム構成を考えた」(川西氏)と説明する。
得意分野のエンターテインメントにこだわり
エンターテインメントは、ソニーが得意とする分野だ。川西氏は「長年培ってきたオーディオビジュアル技術で車内に新たな感動空間を作り出す」と自信を見せる。まずオーディオは「没入感のある立体的な音場を再現する」(川西氏)という360リアリティーオーディオを採用。音源データに位置情報を付けた空間音響技術で、再生時には音が各方向から鳴り響き、まるでアーティストが同じ空間で生演奏しているような臨場感を体験できるという。
HMIにもソニーのこだわりをみせる。前席正面には大画面のパノラミックスクリーンを配置し、さまざまな情報を表示。インタフェースもハプティクス(触覚)フィードバックを用いたタッチパネルや、手元でブラインド操作できるジョグダイヤルなど複数用意した。「デジタル化が進みクラウドとの常時接続が一般化すると、今後はますます車内の情報量が増大する」(川西氏)といい、「HMIは技術的にITが生かしやすい場所であり、メーターなどのリアルタイムな情報表示、高精細なグラフィック表示、ネットワークコネクティビティ、統合的なUXやアプリケーションなど、幅広い領域にこれまでソニーが培ってきた技術をふんだんに盛り込んだ」(同氏)と説明する。
ソニーはこれまで、テレビやカメラ、スマートフォンといったコンシューマー向け製品から、イメージセンサーなどのセンシングデバイス、「プレイステーション」などゲーム、さらには映画や音楽コンテンツなど多様な商品やサービス技術を展開してきた。VISION-Sでは、これらの技術を組み合わせてモビリティの移動空間で全く新しいユーザー体験を提供する狙いだ。
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