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かつて米軍に重用されたRTOS「RTEMS」、今や航空宇宙分野で揺るぎない地位にリアルタイムOS列伝(11)(2/3 ページ)

IoT(モノのインターネット)市場が拡大する中で、エッジ側の機器制御で重要な役割を果たすことが期待されているリアルタイムOS(RTOS)について解説する本連載。第11回は、かつて米国の軍需向けで重用されてきたRTOS「RTEMS」を紹介する。現在は軍需ではなく、航空宇宙分野向けフリーRTOSの座を射止めている。

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2001年から薄まっていった軍事色

 ちなみにこのちょっと後になるが、1999年におけるRTEMSのブローシャーでは以下のような文言が入っている。

With the emergence of Ada as the DoD standard programming language for embedded systems, and the effort to reduce the cost of developing embedded weapon systems, the Government Research and Development community identified a need for a Government owned real-time executive. In response to this need, the Research, Development and Engineering Center of the U.S. Army Missile Command initiated a research project to develop a real-time executive for embedded systems. The product which resulted from this effort is the Real Time Executive for Military Systems (RTEMS). Subsequently, the Department of Defense formulated a strategy to reduce software life cycle costs. A key to this strategy is the adoption of Software Reuse and Dual-Use initiatives and the existing Ada programming language mandate. The RTEMS effort fully supports these initiatives by providing a reusable software component that is both modular and maintainable.

 訳としては「組み込みシステム用の国防総省の標準プログラミング言語としてAdaが登場したことおよび組み込み兵器システムの開発コスト削減のため、政府所有のリアルタイムエグゼクティブの必要性が指摘されていた。このニーズに応えるため、MICOMの研究開発技術センターは組み込みシステム用のリアルタイムエグゼクティブを開発する研究プロジェクトを開始した。その結果生まれたのがRTEMSという製品である。国防総省はその後、ソフトウェアのライフサイクルコストを削減するための戦略を策定した。この戦略の鍵となるのは、ソフトウェアの再利用や二重使用に関する取り組みと、既存のAdaプログラミング言語の義務化を採用することだ。RTEMSは、モジュール化された再利用可能なソフトウェアコンポーネントを提供することで、これらの戦略を完全にサポートしている」となるだろうか。

 つまり、プログラミング言語にAdaを利用できるRTOSとして米国防総省が積極的にRTEMSを広めていったことが分かる。ただし、1998年まではGPLとCygnus BSD distributable copyrightを足して二で割ったような独自のライセンスだった(一般の利用は無償、ソースコード配布時のみ制限が掛かる)が、最新のものは修正GPL 2.0をベースに、一部2条項BSDライセンスその他が入るという形に切り替わっている。

 この軍事色の強かったRTEMSがその影響を脱し始めたのは2001年以降である。開発プロジェクトの形態はオープンソース方式になり、OARはSteering Committee(運営委員会)に参画するということで引き続きRTEMSを後方からサポートするという形になった。当初は、そのSteering CommitteeにANL(米アルゴンヌ国立研究所)のメンバーも入っていたあたり、まだ米軍の影響がないわけではなかったが、その後急速に軍事色は薄まってゆく。

 おそらく理由の一つは、Adaでのシステム開発の頻度が急速に減ったことだろう。その背景にはCOTS(Commercial off-the-shelf:商用システムの軍事向け転用)の頻度が高まったことがある。民間の商用システムでAdaをベースにソフトウェアを構築していた例はほとんどなく、だからといってソフトウェアだけAdaベースで作り直すのはコスト削減というCOTSのメリットを完全につぶしてしまう。その結果、Adaでなくてもシステムの構築ができる(というか、構築してもよくなる)となると、RTEMSを無理に普及させる必要もないというわけだ。

 一方のRTEMSは、確かにAda対応版もあるが、最初はそもそもC言語で記述されており、C言語をベースに広範に使われている。であれば軍向けという看板を外し、一般向けに広くオープンソースの形で提供していくという形にすることで存続を図るのは賢明な判断だったと思う。

 Webサイトも2003年には現在のhttp://www.rtems.org/に切り替わり、2004年にはWikiも立ち上がった。GitHubには、1995年5月にリリースされたVersion 3.5.0-alpha以降のソースが全部登録されており、スムーズにオープンソースらしい体制に移行している。

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