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国内11社が量子技術応用の協議会を設立へ「産業応用でも世界をリードする」量子コンピュータ(2/2 ページ)

量子技術による社会構造変革を目指す民間企業11社は、業界の垣根を越えて量子技術を応用した新産業の創出を図るための協議会である「量子技術による新産業創出協議会」の設立に向けた発起人会を開催。今後は2021年7〜8月の協議会設立に向けて、より多くの企業の参加を目指して具体的な準備を進めていく方針である。

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協議会設立発起人会会長に東芝の綱川氏が就任「協議会に強くコミット」

 会見には、同協議会の発起人である11社の経営トップが出席した。東芝 取締役会長 代表執行役社長 CEOの綱川智氏、NEC 取締役会長の遠藤信博氏、NTT 取締役会長の篠原弘道氏、日立 執行役会長兼執行役社長兼CEOの東原敏昭氏、富士通 社長CEO兼CDXOの時田隆仁氏が会見場に集まった他、オンラインでJSR 取締役会長の小柴満信氏、第一生命ホールディングス 取締役会長の渡邉光一郎氏、東京海上ホールディングス 取締役会長の永野毅氏、トヨタ自動車 代表取締役会長の内山田竹志氏、三菱ケミカルホールディングス 取締役会長の小林喜光氏、みずほフィナンシャルグループ 取締役会長の佐藤康博氏が参加した。また、会見場に出席した内閣府 科学技術・イノベーション推進事務局長の赤石浩一氏の他、オンラインで内閣総理大臣補佐官の和泉洋人氏や文部科学省、経済産業省、総務省の局長級の担当者が参加し、政府として同協議会の活動をバックアップする姿勢を見せた。

 なお、同協議会の設立発起人会の会長に東芝の綱川氏が就任することも決まった。

内閣総理大臣補佐官の和泉洋人氏
内閣総理大臣補佐官の和泉洋人氏

 会見の冒頭、内閣総理大臣補佐官の和泉氏は「2020年1月に策定した量子技術イノベーション戦略に基づき、日本国内でも産学官で量子技術の基礎研究から社会実装に向けた取り組みを進めている。しかし、量子技術は当初の想定を超えるスピード感を持って世界各国が開発を進めている状況だ。先の日米首脳会談でも量子技術に関する連携を進化、強化することを確認しており、日EU間でも重要な技術として位置付けられている。国家安全保障の観点からも量子技術は現代社会に変化をもたらす重要な基盤になるとみられている。政府と連携を深め、産業化や事業化を促進していく中核としてこの協議会が活動することを期待している。関係省庁には必要性があれば協議会にオブザーバー参加するように指示しており、政府としても政策面でしっかり連携したいと考えている」と語る。

NTTの篠原弘道氏
NTTの篠原弘道氏

 続けて、NTTの篠原氏が協議会の設立趣旨を説明した。総合科学技術・イノベーション会議(CSTI)の議員も務める篠原氏は「量子技術は広範囲な産業に大きな産業分野に非常に大きなインパクトを与えるものとして期待されている。量子は、粒子と波動の二重性、量子重ね合わせ、量子もつれといった特異的な振る舞いをする。この量子の特徴を活用することで従来技術では実現できなかった、大容量、高精度、高信頼、低消費電力などの性質を実現できる可能性がある。すなわち量子とは、さまざまな分野でイノベーションを起こし日本の産業を強化するポテンシャルを持っている。一方で、量子技術はテーマによっては研究から事業化するまで長期間にわたるものもある。そういった場合でも、量子技術の研究者と応用分野の知識を持った産業界のメンバーが早い段階から連携して、研究と社会実装に向けた準備を並行して進めていくことが重要だ。そういう観点では、2021年3月に閣議決定された第6期の科学技術基本計画の中でも、量子分野における産学官連携の重要性が指摘されており、これを受けて量子技術における産学官の連携を産業界の柱としていくことを決め、今回の新たな協議会の設立に向けて設立発起人会の準備を進めてきた」と述べる。

 また「量子技術の産業応用では、輸送ルートの最適化や新薬の探索など幾つかの分野で量子計算(量子コンピューティング)の適用の検討が始まっている。量子計算では、さまざま産業分野で実問題を素早く解くための研究開発を進めるとともに、産業界としては適用分野の拡大に取り組んでいかなければならないだろう。また、量子暗号、量子センサー、量子マテリアル、量子デバイス、量子生命といった分野も、日本の産業界の大きな発展を促すようなポテンシャルを持っており、早い段階から産学官で英知を集結する必要がある。協議会では幅広い量子技術を産業界で活用できるように働きかけていきたい」(篠原氏)という。

東芝の綱川智氏
東芝の綱川智氏。協議会の設立発起人会の会長に就任する

 設立発起人会の会長を務める綱川氏は「今夏の協議会の設立に向けて、より多くの企業、専門家に参加していただけるよう、設立発起人会会長として協議会に強くコミットし、オールジャパン体制での量子イノベーション立国の実現を目指す。今後日本が海外に対抗していくには、量子技術でさまざまなユーザーをつなぐネットワークである『量子スーパーハイウェイ』などの社会実装を早期に進めることが必要であり、これは1社で実現できることではない。世界に目を向ければ、既にさまざまな国が量子技術の開発にしのぎを削るとともに投資を拡大している。量子技術は中長期の産業競争力や、国家安全保障を左右する技術だ。量子技術に基づくコンピュータ、通信、シミュレーションなど、日本は世界をリードする技術を多数有している。これまで日本は、技術で勝って産業で負けると一部から指摘されてきたが、来たる量子時代において技術面に加え、まずできるところから始めるというスピード感を持って産業面でも世界をリードしていきたい」と説明する。

 なお、“オールジャパン”という言葉が出てきているように、協議会の活動は日本の産学官による量子技術の研究開発や社会実装に焦点が当たっている印象が強い。ただし、海外との関係性ついては「国際連携もしっかり視野に入れていく」(綱川氏)としている。また、2020年7月に東京大学が中心になって設立した「量子イノベーションイニシアティブ協議会(QII協議会)」とも連携していく方針である。

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