工場で広がる「無線」への期待と課題、ローカル5Gは何を変えるのか:いまさら聞けないスマートファクトリー(8)(2/4 ページ)
成果が出ないスマートファクトリーの課題を掘り下げ、より多くの製造業が成果を得られるようにするために、考え方を整理し分かりやすく紹介する本連載。前回から製造現場でつまずくポイントとその対策についてお伝えしていますが、第8回では、製造現場で広がる無線通信活用の課題と生かし方について解説します。
スマートファクトリー化で広がる「無線」への期待と課題
さて、前回、AI活用がうまくいかなかった矢面さんですが、着実に前に進んでいるようですよ。
印出さん、こんにちは。
矢面さん、こんにちは。あら、顔色いいじゃない。AI活用の方も進展したの?
そうなんですよ。AIを何とか使えないかという視点だったのを、ちょっと視点を変えてやっぱり「工場の課題」から考えようとするとうまくいき始めたんです。
あら、どうやったの?
まだ一部ですけど、30年くらい使っている製造装置があるんですけど、それがたまに不具合を起こすんですね。それを解決するためにAI活用を進めたら、停止の予防ができるようになったんです。
あら、すごいじゃない。それは費用対効果に見合う感じだったの?
はい。重要な作業を担う代替できないものなので、これが止まると周辺の作業も止まるという状況で、生産計画や出荷や調達にも影響するものだったり、残業にもつながっていたりするので、こうしたコストを計算すると費用対効果が折り合う感じになったんですよ。
「環境の変化」という点もクリアしているのよね。
もちろんですよ。作業の電流値と振動値を組み合わせてデータを取っているんですが、その値そのものをAIに判断させるのではなく、これらのグラフの波形の変化を判断させるようにしています。導入してしばらくたちますが、いけそうです。
素晴らしいわね。それで、今日はその報告?
もちろんその報告もありますが、進めるうちに新たな悩みが出てきたんですよ。
データ収集のハードルを下げる無線通信の活用
次はどういう課題を持ってきたのでしょうか。
あら、今度はどうしたの?
この製造装置の設置場所は、工場事務所から離れていて、データを集めてくるのが大変なんですね。そこで無線通信でデータ収集できないかを考えたんですが、調べてみるといろいろ無線ネットワークが大変なことになっていまして。
なるほど、チャンネル数の問題や干渉の問題かしら?
そうなんですよ。既にいろいろなラインでWi-Fiとかは使っていて、チャンネル数に空きがなかったり、同じ周波数帯域で干渉が発生してAGV(無人搬送車)が止まったりとかいろいろ問題が起きているんです。
スマートファクトリー化が進んだことで、工場内でデータを取得し活用しようという動きはかつてないほど高まっています。こうした中で有線によるケーブル配線の負荷を軽減できる「無線通信」は、手軽に活用できることから、導入が広がっています。特にWi-Fiを含む非免許型無線通信技術はよく使われるようになっていますが、そこには落とし穴があります。
特に工場内のWi-Fi活用などでよく聞くのが、チャンネル数が埋まってしまうケースや、干渉の問題です。Wi-Fi利用機器が工場内で急速に増えたことにより、利用が制限されたり、それぞれが相互干渉して正しく動作しなかったりすることが頻発しています。従来は、工場内でネットワークを活用する動きそのものが限定的で少なく、試験的な導入が多かったので気付かない場合がほとんどでした。しかし、業務に本格的に取り入れ、工場内で多くの機器と接続するようになれば、工場内ネットワークについて、有線や無線を組み合わせ、全体的に考えていかなければなりません。
グーチョキパーツも「工場内ネットワークの在り方」を考える時が来たのかもしれないわね。
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