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ボルトが疲労破壊しない条件設計者向けCAEを使ったボルト締結部の設計(3)(2/4 ページ)

部品の固定(締結)のために使用する“ボルトの設計”をテーマに、設計者向けCAE環境を用いて、必要とされる適切なボルトの呼び径と本数を決める方法を解説する。連載第3回は「ボルトが疲労破壊しない条件」について詳しく取り上げる。

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ボルト締め付け線図

 ばね定数が求まりましたので、締め付け線図を作成しましょう。前ページに示した図1の初期状態を考えます。ボルトはλbだけ伸びていて、被締結体はλpだけ縮んでいるとしました。F、λb、λpの関係は式1式2で表しました。この状態の締め付け線図を図7に示します。線図の傾きはばね定数となります。

締め付け線図(初期状態)
図7 締め付け線図(初期状態) [クリックで拡大]

 続いて、被締結体に荷重Wが作用している状態の力関係を図8に示します。

締結体とボルトに作用する力(荷重が作用した状態)
図8 締結体とボルトに作用する力(荷重が作用した状態) [クリックで拡大]

 被締結体1に作用する力に注目します。荷重Wによって上方向に引っ張られるので被締結体1と被締結体2が押し合っていた力は「F−Fp」に減少します。被締結体1が上方向に引っ張られたのでボルトが下方向に押す力は「F+Fb」に上昇します。このとき被締結体1と被締結体2の合計長さLは、λだけ伸びるという考えはとても自然な発想です。これに従いましょう。つまり、ボルトはλだけ伸びて、被締結体もλだけ伸びるのですが、被締結体は初期状態でλpだけ縮んでいるため、被締結体の縮み量は「λp−λ」になると考えられます。

 被締結体1の上下方向の力のつり合いを考えます(式8式9)。

式8
式8
式9
式9

 ボルトの伸びλと被締結体の縮み量の変化量λを考慮して、荷重Wが作用した状態の締め付け線図を図9に示します。

締め付け線図(荷重Wが作用した状態)
図9 締め付け線図(荷重Wが作用した状態) [クリックで拡大]

 変動荷重が作用したときのボルトに発生する応力振幅が関心事なので、FbとWの関係を求めましょう。図9から式10式11が成立することが分かります。

式10
式10
式11
式11

 式10式11を、式9に代入すると式12が導かれます。

式12
式12

 式10式12を代入します(式13)。

式13
式13

 Φは式14で定義され、「内力係数(または内荷重比)」と呼ばれる量で、Φを用いてボルトに発生する変動荷重が求まります。

式14
式14

 ついでに、Fpを求めると式15となります。

式15
式15

 以上で、FbとWの関係が求まりました。

ボルトに発生する変動荷重【その1】

 荷重Wが、0〜Wまで変動する場合を考えてみましょう。ボルトに発生する変動荷重は図10のようになります。締結面が離れなくても、ボルトには案外大きな変動荷重が発生しそうです。

変動荷重が作用したときにボルトに発生する荷重
図10 変動荷重が作用したときにボルトに発生する荷重 [クリックで拡大]

 ここまでは多くの書籍で述べられています。ここから本論になります。

 ボルトと被締結体のばね定数について取り上げた際、ばね定数を見積もり、KbとKpに「約6倍の開きがある」と述べました。内力係数Φを0.138[-]として、グラフに数値を代入しましょう。図11のようになります。

変動荷重が作用したときにボルトに発生する荷重
図11 変動荷重が作用したときにボルトに発生する荷重 [クリックで拡大]

 ここではM10ボルト、締め付けトルク24.5[Nm]、摩擦係数0.26[-]としました。図11から、ボルトの変動荷重幅(最大値−最小値)を読み取ると、つまり式13で求まる値は552.7[N]となります。この値は覚えておいてください。

 KbとKpを比べると、圧倒的にKpが大きく、締め付け線図の被締結体側の傾きは、多くの文献で図10のように描かれているのですが、実際はそのようなものではなく、被締結体の傾きはとても急峻(きゅうしゅん)なのです。

 この結果、ボルトに作用する変動荷重はとても小さくなって、応力振幅も小さくなり、ボルトの繰り返し荷重に対する耐性が強いものになるのです。連載第1回で、「ボルトが適切なトルクで締め付けられていれば、ボルトは疲労に対して案外タフだ」と述べた理由はここにあります。実は、ボルトに発生する応力振幅はもっと小さくなります。有限要素法の出番です。

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