出そろった2020年度決算、2030年の電動車戦略は見直しを迫られる:自動車業界の1週間を振り返る(1/3 ページ)
1週間、お疲れさまでした。大型連休明けはうまく復帰できましたか? カレンダーに関係なくお仕事だったという方もいらっしゃるのでしょうか。梅雨入りのニュースも聞こえてきて、季節が進んでいるのを感じますね。湿度が高いシーズンが来るのは憂鬱です。
1週間、お疲れさまでした。大型連休明けはうまく復帰できましたか? カレンダーに関係なくお仕事だったという方もいらっしゃるのでしょうか。梅雨入りのニュースも聞こえてきて、季節が進んでいるのを感じますね。湿度が高いシーズンが来るのは憂鬱です。
さて、今週は自動車メーカーの2020年度決算の発表が相次ぎました。改めて言及するまでもなく、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に振り回された1年の決算です。振り返ると、2020年2月には中国でCOVID-19の感染が広がり生産台数は大幅減。その後、新年度に入って4月には米国で各社の生産が0台となりました。感染拡大の動向が各地でバラつく中、2020年10月には生産、販売台数が10月としては過去最高を更新する自動車メーカーが続出しましたね。2021年に入ると車載半導体の供給不足の影響が出始め、米国を襲った寒波、福島県沖地震、火災などがサプライチェーンへの打撃となりました。
モノを作りたくても、経済活動が制限されて売れないので、作れない場面。作ったモノを運びたくても、コンテナ不足や航空輸送の混雑などによって運べない場面。モノを売りたくても、部品の供給問題で作れないので、売れない場面。さまざまなフェーズの間で揺れた1年だったのではないでしょうか。2020年度決算や2021年度の業績見通しの数字をみていると、同じ環境に置かれていても業績の傾向は全く同じではなく、これまでの戦略や体質が現れたように思えます。
売上高 | 販売台数 | |||||
---|---|---|---|---|---|---|
2019年度 | 2020年度 | 2021年度見通し | 2019年度 | 2020年度 | 2021年度 | |
トヨタ | 298,665 | 272,145 | 300,000 | 895.5 | 764.6 | 870.0 |
(会見基準変更) | -8.9 | 10.2 | -0.2 | -14.6 | 13.8 | |
ホンダ | 149,310 | 131,705 | 152,000 | 479.0 | 454.6 | 500.0 |
-6.0 | -11.8 | 15.4 | -10.0 | -5.1 | 10.0 | |
日産 | 98,788 | 78,625 | 91,000 | 493.0 | 405.2 | 440.0 |
-14.6 | -20.4 | 15.7 | -10.6 | -17.8 | 8.6 | |
スズキ | 34,884 | 31,782 | 未定 | 285.2 | 257.1 | 未定 |
-9.9 | -8.9 | -14.3 | -9.9 | |||
マツダ | 34,302 | 28,820 | 34,000 | 141.9 | 128.7 | 141.0 |
-3.8 | -16.0 | 18.0 | -9.0 | -9.3 | 9.6 | |
スバル | 33,441 | 28,302 | 33,000 | 103.4 | 86 | 100.0 |
6.0 | -15.4 | 16.6 | 3.3 | -16.8 | 16.3 | |
三菱自 | 22,703 | 14,555 | 20,600 | 112.7 | 80.1 | 95.7 |
-9.7 | -35.9 | 41.5 | -9.4 | -28.9 | 19.5 | |
売上高の単位は億円、下段は前年度比。販売台数の単位は万台、下段は前年度比 |
2021年度は2019年度の水準に戻す1年
コロナ禍の影響が本格化していない2019年度と、2020年度の決算、2021年度の業績見通しを並べてみます。2020年度は全ての自動車メーカーが減収、本業のもうけを示す営業損益はホンダを除いて6社が減益です。ホンダの営業利益は、売上変動や構成差に伴う利益減などで3951億円のマイナス要因があったものの、プラス要因としてはクレジット損失引当金の計上差など「販売費及び一般管理費」で2750億円、コストダウンで1325億円、研究開発費の効率化で612億円がありました。
営業損益 | 研究開発費 | 設備投資 | |||
---|---|---|---|---|---|
2019年度 | 2020年度 | 2021年度見通し | 2021年度見通し | ||
トヨタ | 23,992 | 21,977 | 25,000 | 11,600 | 13,500 |
会見基準変更 | -8.4 | 13.8 | 6.3 | 4.3 | |
ホンダ | 6,336 | 6,602 | 6,600 | 8,400 | 3,200 |
-12.8 | 4.2 | -0.03 | 7.6 | -0.4 | |
日産 | △404 | △1,506 | 0 | 5,400 | 4,400 |
- | - | - | 7.2 | 8.5 | |
スズキ | 2,150 | 1,944 | 未定 | 未定 | 未定 |
-33.7 | -9.6 | ||||
マツダ | 436 | 88 | 650 | 1,280 | 1,550 |
-47.0 | -79.8 | 637 | 0.4 | 66.7 | |
スバル | 2,103 | 1,025 | 2,000 | 1,200 | 1,000 |
15.7 | -51.3 | 95.2 | 18.1 | 16.0 | |
三菱自 | 128 | △953 | 300 | 990 | 900 |
-88.6 | - | - | -2.4 | 17.8 | |
金額の単位は億円、下段は前年度比 |
マツダはかろうじて営業黒字を確保しましたが、アライアンスを組んでいる日産自動車と三菱自動車はそろって営業赤字でした。日産と三菱の2020年度の販売台数は前年度から大幅に減少しており、マイナス幅の大きさは他社と比べても目立ちます。なお、スバルは車種間の共通部品の多さから半導体供給不足の影響が特に大きく、主要市場の米国ではCOVID-19の感染拡大で港湾の荷役が遅れたことなどが大幅な販売減の要因となっています。
数字を見ると、2021年度は各社ともコロナ前の2019年度の水準に業績を戻す1年ですが、2019年度は決して自動車業界にとって明るい1年ではありませんでした。その2019年度を基準にして回復しても“全快”とは言い切れないかもしれません。半導体の供給不足や材料コストの高騰など足かせとなる要因も待ち構えています。複数の自動車メーカーが2021年度の販売計画について半導体供給不足などのリスクを織り込んだ台数を発表していますが、そろって下期の挽回生産を前提にしています。2021年度下期に諸々の状況が落ち着いていることを願ってやみませんが、それでも何が起きてもおかしくないという備えは不可欠です。
しかし、2019年度と大きく違うのは、原価改善を徹底した2020年度の経験を持って2021年度に臨んでいるという点です。トヨタ自動車 執行役員の近健太氏は「前年度に取り組んだ改善や変革をいかに定着できるか、という正念場になる。将来的に損益分岐台数をもっと下げて投資の余力を生むためにも、この1年の取り組みを定着させていく必要がある」とコメントしています。マツダ 社長の丸本明氏も「2020年度の取り組みで損益分岐点台数は着実に下がっている。今期はこの活動を継続し、損益分岐点台数を中計目標の100万台レベルまで引き下げる。サプライチェーン全体で原価低減を進める」と述べています。
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