2020年度の新車生産、各社が受けた新型コロナのダメージは:自動車メーカー生産動向(3/4 ページ)
2020年度の自動車産業は、通期で新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響に左右される1年となった。日系乗用車メーカー8社の2020年度(2020年4月〜2021年3月)のグローバル生産は、全社が前年度実績を下回り、8社合計では前年度比12.1%減と2桁%減となった
日産
日産の2020年度のグローバル生産台数は、前年度比17.1%減の379万7187台と3年連続で前年実績を下回った。前年度から続く世界的な販売不振に伴う生産調整に加えて、COVID-19感染拡大による生産停止の影響が重なった。国内生産は前年度比31.8%減の51万7044台で4年連続のマイナス。国内向けでは主力モデルの「ノート」や「セレナ」「エクストレイル」「リーフ」などの販売が低迷したことに加えて、輸出も同66.4%減と大幅に減少した。
海外生産も前年度比14.2%減の328万143台と低迷し、3年連続の前年割れとなった。国別では、COVID-19感染拡大からの回復が早かった中国は同16.3%増と唯一のプラスを確保。その他の拠点は米国が同38.2%減、メキシコが同18.8%減、英国が同24.3%減など全て2桁パーセント減と大きく台数を落とした。
年度では厳しい日産も足元では着々と回復が進んでいる。3月単月のグローバル生産は前年同月比49.7%増の39万2139台と4カ月連続で前年実績を上回った。ただ、COVID-19感染拡大で前年実績が著しく低かったのも要因であり、コロナ前の2019年3月と比較すれば12.2%減と本格回復までは至っていない。
生産回復のけん引役は海外で、前年同月比56.4%増の32万3286台と4カ月連続のプラス。前年が生産調整を実施していた中国が同109.0%増と倍増した他、半導体不足で生産調整を実施した北米も前年の反動で同41.7%増と大幅に伸長した。国別に見ても全ての拠点で2桁パーセント増を記録した。
国内生産も前年同月比24.7%増の6万8853台で2カ月連続のプラス。北米向け新型「ローグ」の好調などで輸出が同33.2%増と大きく伸長し、1月に投入した新型ノートも貢献した。ただ、新型ノートも半導体不足の影響を受けて納期が長期化するなど、本格回復に水を差す格好となっている。
スズキ
スズキの2020年度のグローバル生産台数は、前年度比10.6%減の265万1148台と2年連続の前年割れとなった。このうち同社生産の半数を占めるインドは、COVID-19感染拡大によるロックダウンなどにより、同8.7%減の143万9803台と2年連続で減少した。その結果、海外生産も同14.8%減の172万1032台と2年連続で減少した。国内は同1.5%減の93万116台と2年連続のマイナス。ただ、減少幅は8社の中で最も少なかった。これは「ハスラー」の新型車効果や、前年度が完成検査問題で生産台数を減らしていた反動によるもので、コロナ禍でも前年度並みの水準を維持した。
3月単月の生産も好調に推移している。グローバル生産台数は、前年同月比41.6%増の30万1917台と2カ月連続で増加した。中でもインドは前年の生産停止の反動に加えて、金利引き下げなどの需要喚起策が奏功して同86.4%増と大幅プラス。2カ月連続の前年超えとなった。インドを除いた海外生産も同12.2%増と20カ月ぶりにプラスへ転じた結果、海外生産は同68.6%増の20万5217台と2カ月連続で増加した。ただ、インドでは4月から変異株によるCOVID-19の爆発的な感染拡大が続いており、医療用酸素の不足に伴い自動車は生産停止に追い込まれるなど、先が見通せない状況に陥っている。
なお、国内生産は前年同月比5.8%増の9万6700台と3カ月ぶりにプラスへ転じた。欧州向けなど輸出が同44.4%増と急伸した他、ハスラーに加えて「スペーシア」「ソリオ」「ジムニー」などの国内販売が好調だった。
マツダ
マツダの2020年度のグローバル生産台数は、前年度比18.3%減の117万1314台と3年連続の減少となった。国内生産は同23.1%減の74万7610台と2年連続のマイナス。国内販売が同12.9%減と低迷した他、輸出も欧州のロックダウンなどにより同24.1%減と伸び悩んだ。車種別では主力モデルの「CX-5」が同19.5%減、「マツダ3」が同37.6%減、「CX-30」が同20.3%減だった。特に欧州ではディーゼルエンジン車の販売不振に加えて、CO2排出量規制への対応でCX-5など上級モデルの価格設定を値上げしたことが大幅なマイナスにつながった。
海外生産は前年度比8.3%減の42万3704台と3年連続のマイナスだった。いち早く市場回復が進んだ中国はマツダ3やCX-5、CX-30の好調により同7.1%増とプラスを確保。メキシコもCX-30の堅調により同0.9%増と増加した。一方、タイはCOVID-19感染拡大からの回復遅れにより生産調整を実施した結果、同47.1%減と大きく台数を落とした。
3月単月のグローバル生産台数は、前年同月比13.3%増の12万7308台と5カ月ぶりにプラスへ転じた。国内生産は同19.1%増の8万8411台と3カ月ぶりに前年実績を上回った。前年に実施していたロックダウンの反動で欧州向け輸出が同142.3%増と急伸。輸出トータルでも同31.0%増と回復基調が鮮明となった。車種別ではCX-5が同32.3%増、「CX-3」が同63.5%増とけん引した。
海外生産は前年同月比1.9%増の3万8897台と5カ月ぶりのプラス。メキシコがCX-30の増加により同7.6%増、タイも前年実績が低迷したため同5.1%増とプラスを確保した。中国は市場環境は好調なものの、「CX-4」やCX-5の減少により同4.4%減と日系メーカーで唯一マイナスだった。
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