ソニーの「Spresense」が採用するオープンソースRTOS「NuttX」とは:リアルタイムOS列伝(10)(2/3 ページ)
IoT(モノのインターネット)市場が拡大する中で、エッジ側の機器制御で重要な役割を果たすことが期待されているリアルタイムOS(RTOS)について解説する本連載。第9回は、日本になじみがないRTOSシリーズ第3弾として「NuttX」を紹介する。このNuttX、実はソニーのIoTセンシングボード「Spresense」に採用されているのだ。
独自展開からApacheソフトウェア財団によるインキュベーションへ
この頃からNuttXの配布場所も、Source Forgeからhttp://www.nuttx.org/という独自ドメインに切り替わっている。この当時の特筆すべき話は、新アーキテクチャへの移植を無償で受けていたことだ(図5)。
あくまでオープンソースコミュニティーが入手可能なハードウェアに限っており、また無制限というわけではないが、この時期は対応ターゲットを増やすことに注力していた感がある。ちなみに少し後の2015年4月における対応ターゲットは、CPUコアでいえば以下のようなものがある。
- ARM:ARM7TDMI/ARM920T/ARM926EJS/Cortex-A5/A8/Cortex-M0/M0+/M3/M4/M7
- Atmel:8bit AVR/AVR32
- Freescale:M68HCS12
- Intel:80x52/80x8
- Microchip:PIC32MX(MIPS 24Kc)/PIC32MZ(MIPS M14K)
- Renesas:SuperH/M16C/26
- ZiLOG:ZNEO Z16F/eZ80 Acclaim!/Z8Encore!/Z180/Z80
具体的には72ほどの製品ファミリーが並んでいる。よくもまぁ8052とかAVR32とかまでサポートしたものだという感じではあるのだが。
さて、その後も開発はどんどん進み、NuttXのバージョンも上がっていくのだが、Nutt氏自身はNX Engineering, S.A.の経営からは手を引き(今はコスタリカ人の経営者が運営しているもよう)、非営利のコンサルタント的ポジションにいるらしい。またNuttXのサポートも、ハワイにあるNSC Dgという会社が引き継いだようで、実際にhttp://www.nx-engineering.comにアクセスするとNSC Dgに自動的に移動するようになっている。
これと前後して起きたのが、オープンソースソフトウェアプロジェクト支援団体のApacheソフトウェア財団によるインキュベーションである。NuttXのプロジェクトは2019年12月にインキュベーション状態となり、プロジェクトそのものも「Apache NuttX」となった(図6)。引き続きNutt氏もこのApache NuttXのPPMC(Podling Project Management Committee)兼コミッターとなっており、実際同氏の経歴も最新の職業は“Open Source Developer”になっている。このあたり、形は違えど「Amazon FreeRTOS」の原作者であるRichard Barry氏がAWSチームに移籍して引き続きFreeRTOSに携わっているのに近いものがある。
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