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NVIDIAも「ユニーク」と評価、Jetson Nano内蔵のインテリア風デザインAIカメラ組み込み開発 インタビュー(2/2 ページ)

スタートアップのエクサウィザーズが発売した2眼レンズ搭載のAIカメラ「ミルキューブ」。小型スピーカーなど家電製品のようなデザインだが、Jetson Nanoを内蔵するなど性能は高い。しかし、ソフトウェア/ソリューション開発企業のエクサウィザーズがハードウェアを開発する狙いはどこにあるのか。

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ライフスタイルに寄り添った「CaaS」を実現

 エクサウィザーズは現在、「人中心の分散型スマートシティー構想」をコンセプトに、データ活用や最新技術で住みやすい街を実現するプロジェクトを推進中だ。既存のスマートシティー開発プロジェクトは大規模で、大企業や国がトップダウン型で価値提案を行うものが多い。これに対してエクサウィザーズは小規模で、かつ住民のライフサイクルに寄り添ったボトムアップ型の価値提案を目指すとしている。

 その際に重要な役割を果たすハードウェアデバイスとして考案されたのがミルキューブである。具体的な活用領域としては介護や教育、保育現場などを主に想定しており、撮影した画像/映像に基づくさまざまなサービス(CaaS:Camera as a Service)提供を行う予定だ。

 ミルキューブの特徴である「風景になじむインテリア性を重視したハードウェアデザイン」(土倉氏)も介護、教育、保育現場への導入を意識したものだ。既存のAIカメラには監視カメラのように、周囲に存在感を与えることを目的としたデザインも多いが、ミルキューブではむしろ現場環境に溶け込むデザインを狙ったという。

 将来的には物流や製造業などリアルタイム性が求められる領域にも展開する計画がある。工場内での時間帯やゾーン別の人数のカウント、プロセス別の投入工数可視化といった分野でPoC(概念実証)を進めている最中だという。

 「そもそもミルキューブは開発当初、物流や製造業現場への導入を主に想定していた。Jetson Nanoを採用したのも、これらの現場ではAIカメラとクラウドサーバ間のトランザクションが非常に多くなり、それに対応する必要があるからだ。逆に、医療や教育分野で使用する分には、Jetson Nanoはオーバースペック気味に感じられるかもしれない。ただ、例えば、介護施設における入居者の転倒防止などでは、ある程度のリアルタイム性が要求される。Jetson Nanoの採用は、結果的にミルキューブを応用範囲の広いプロダクトに仕上げる上で役立ったといえる」(土倉氏)


ビジネスや暮らしなど多分野展開を目指す*出典:エクサウィザーズ[クリックして拡大]

パナなどメーカー出身エンジニアらが開発チームに参加

 エクサウィザーズは元来、AIソリューションを開発、提供する企業であり、ハードウェア製造は手掛けていなかった。しかし今後、顧客に「一歩踏み込んだAIソリューション」(土倉氏)を提案する上ではハードウェアの自社開発を避けて通れないと考えたという。

 「AIカメラを用いて画像解析を行い、自動化を進めたいという顧客の声は非常に多かった。しかし、画像処理関連の課題をヒアリングすると、『そもそもAIに使える画像が手元にない』『撮影環境がない』という問題点が相当数存在していた。また、撮影はしていてもデータを有効活用できておらず、結果を出せていない事例も散見される。ソリューション提案力を総合的に強化する上でハードウェア導入の必要性を感じた」(土倉氏)

 ただ、その時点ではエクサウィザーズが求める水準のAIカメラが市場になかった。そのため、カメラの構成設計や開発を一から自社で行うことにした。

 実際の設計開発を担当するのはハードウェア分野とソフトウェア分野の専門人材からなる10人のチームで、パナソニックなどの家電、電機、自動車、部品メーカー出身の技術者や、調達業務などを行っていたメンバーが在籍する。なお、ハードウェアの製造自体は第三者に委託している。

 「カメラ開発だけでなく、人感センサーなどセンシングデバイスなどの選定もできる点が強みだ。取得したいデータに対してハードウェアをまとめて提案できる。ソフトウェア開発の企業にあって、ハードウェア選定まで行えるのは貴重な力となる」(土倉氏)

 ソフトウェア面では、被写体がきれいに映った画像の自動選定や製造業向けの不良品検品など用途別にAIアルゴリズムを開発する他、Jetson Nano上でアルゴリズムを動かすための中間処理システムも手掛ける。また、顔認証や属性解析、骨格推定などのアルゴリズムを互いに連携させるための取り組みも遂行している。

 アルゴリズムの精度向上については、インドにあるエクサウィザーズ子会社のAIスタートアップと共同で取り組みを進めている。スタートアップに在籍する、アルゴリズム開発に特化した専門人材が開発の上流工程から参加する。同スタートアップとの調整は日産自動車出身のソフトウェアエンジニアが担当しているという。

プリミティブな課題を抱える海外工場

 土倉氏は製造業におけるAIカメラ市場の広がりについて、特に海外工場への導入に可能性を感じていると語る。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による海外渡航の制限といった情勢も相まって、グローバルベースでの管理/監督コストを抑制したいというニーズは大きい。ただ、その中で課題とされているのは「サボりや5Sの基準違反など、プリミティブなものが中心だ。国内の高度な自動化、効率化ニーズと比べれば、課題解決に貢献しやすいといえるだろう」(土倉氏)。

 今後ミルキューブをスケールさせる上で重要なのは、導入現場の要求に合わせたカスタマイズ対応の柔軟性だ。一方で課題の1つがプライバシー保護の問題だ。土倉氏は「顧客のプライバシーポリシーに合わせたセキュリティ設定や、AIライブラリの拡充が今後求められることになる」と語る。

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