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チーフエンジニアや経営企画でなくても、クルマの未来を考えることが必要だいまさら聞けない自動車業界用語(12)(1/3 ページ)

自動車の少し先の将来を考えることは、自動車産業で働く全ての人にとってプラスになるのではないかと思います。答え合わせはちょっと先。みなさんもモビリティの未来を想像してみませんか?

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ご安全に! 自動車部品メーカーで働くカッパッパです。


 今回の企画「ショートショートで描く20XX年のモビリティ」では、5年後や10年後ではなく、もっと先の時代にクルマやモビリティはどうなっているのかを短編SF小説「ショートショート」で2本お送りします。全く根拠のない空想、というわけではなく、CASE(コネクテッド、自動運転、シェアリングやサービス、電動化)やMaaS(Mobility-as-a-Service)といった現在開発されている自動車技術を参考にしています。

 「未来なんて考えたところで当たらないし、そんなの自分の仕事じゃない」「開発職でもチーフエンジニアでもない自分の思いつきなんて実現するわけない」。そんな風に考える方もいるでしょう。ただ、クルマの少し先の将来を考えることは、自動車産業で働く全ての人にとってプラスになるのではないかと思います。

 私は日々、クルマに関わるさまざまなニュースをチェックする中で「こんな技術、発想があったのか! 実現するとどうなるだろう」と妄想することがよくあります。トヨタ自動車が2021年2月に建設を始めた「ウーブンシティ」はまさにその1例で、子どものころに夢見た未来のクルマが走る先進都市になることでしょう。今は100年に一度の変革期。これまでにない機能やサービスが発表されています。これからの変革期を生き抜くためには、自動車メーカーだけでなくサプライヤーも含めて、ソフトウェアを中心とした独自技術やサービス開発が必要になります。

 現実的な規制やコストは一旦忘れて、モビリティの未来や将来のビジネスを想像してみませんか? 遠い未来じゃなくても、今の仕事につながるアイデアが生まれるかもしれません。ブレインストーミングでは、実現可能性を一旦棚上げして、新規性に富んだ自由奔放なアイデアを出してみることが重要です。「夢みたい」「実現不可能だ」そんな発想がクルマを発展させてきたことは何度もあります。そして、何よりもクルマの未来を考えるのはワクワクしませんか?

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「いつの時代も恋の始まりはクルマから」

えぇー、免許取ったんだ。すごーい

そんなことないよ、自動運転限定だし

でも1人で乗れるんでしょう。クルマの運転できるなんてうらやましい。私も乗りたいんだけどなー

それなら、この前行きたいって言ってた美術館、クルマで行ってみない?

 そうしてドライブの約束を取り付けたのは1週間前のこと。教習所に通ったのは仕事で必要になるだろうということもあるが、彼女をドライブに誘ってみたかったということもある。2人きりになれるクルマという空間。なんて素晴らしいんだろう。

 それにしても明日のドライブのために親父から借りてきたこのクルマ。仕事用に設定されていて全くデートに向いていない。ボディーカラーはツヤのないくすんだ黒だし、入っている曲は親父が若いころのJ-POPばかり。運転の設定もデフォルトのままだ。

 完璧なドライブにするためにも、今日のうちにクルマをデート仕様に変更しなければ。仕方がない、課金するか。クルマの中央ディスプレイに触り、システムを立ち上げ、アプリストアにつないだ。

 「車内」「外装」「運転」「ゲーム」「音楽」。それぞれのカテゴリーで必要なアプリを選んでいく。彼女に少しでも快適に過ごしてもらえるよう、自動運転は「ハイグレード」を選択。普通の自動運転よりも滑らかに動くこのグレードなら間違いだろう。ドライブ用最新の音楽プレイリスト、2人で楽しめるゲームも選択。それにこのくすんだ外装もなんとかしたいな……よし、彼女が好きだと言っていたこの色に。

選んだアプリを車両にダウンロードしますか?

 「はい」をポチッと押し、アプリを購入する。いささか手痛い出費ではあるものの、これからの未来を思えば安い、安い。親父に返すときには元の設定に返しておかないとな。美術館が終わったらどこに行こう。近くに良い雰囲気のお店はないか調べようとしてスマートフォンを取り出すと1件のメッセージが。

ちょっと微熱があって。感染症も怖いし、明日はキャンセルさせてくれないかな? ごめんね、美術館、また今度ねー

アプリのダウンロードが完了しました

 合成音声とともに、購入したアプリがクルマに適用されていく。くすんだ黒い車体は彼女の好きなピンクに変化した。

(おわり)

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