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GRスープラやNSX、GT-Rが競うスーパーGT、共通化と競争領域を使い分けモータースポーツ超入門(5)(2/3 ページ)

最高峰のGTレースにして、世界でも類を見ないコンペティティブな環境が整うレースカテゴリーが日本に存在する。それがスーパーGTだ。上位クラスのGT500ではトヨタ自動車、ホンダ、日産自動車が三つどもえの戦いを展開し、下位のGT300ではポルシェやランボルギーニ、フェラーリといった世界の名だたるスーパースポーツカーが参戦する。

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ドイツツーリングカー選手権と共通の技術規則

 スーパーGTに参戦するマシンは技術規則にのっとって開発、製作されている。GT500クラスでは、スーパーGTとドイツツーリングカー選手権(DTM)の共通技術規則である「クラス1」(以下クラス1規則)を採用する。スーパーGTを運営するGTアソシエイション(GTA)とDTMの統括団体であるITRが統一に向けて協議を続け、2018年6月に完成した規則だ。

 クラス1規則の特徴は、競技性と経済性、安全性を高いレベルで実現する内容になっている点だ。コスト低減については共通部品を設定。モノコックボディーやリアウイング、トランスミッション、ブレーキ、ダンパーなど主要部品を共通化した。マシン開発と製作における費用低減につなげている。また、安全性についてはFIAの安全規定に準拠させた。競争領域と非競争領域を明確化したのもクラス1規則の特徴といえる。共通部品の採用は開発費用の高騰を抑えるための非競争領域での措置である一方、ファンの目に触れるエアロパーツは競争領域として開発に自由度を持たせている。


クラス1規則ではモノコックやブレーキ(パッド、ディスク、キャリパー)、ショックアブソーバーなど共通部品が多い(クリックして拡大)

 時系列で振り返ると、GT500クラスでは2014年型マシンからDTMと共通のモノコックボディーやパーツを使用。エンジンは別々の形式だったが、2018年6月に公表された完成版のクラス1規則からスーパーGTが採用する排気量2l(リットル)の4気筒ターボエンジンに統一されることが決まった。クラス1規則に完全に合致したマシンでレースが始まったのは、DTMは2019年シーズンから。スーパーGTはモノコックボディーの変更タイミングとなる2020年シーズンからクラス1規則に準拠したマシンでのレースが行われている。

 クラス1規則ではエンジンを排気量2lの直噴ターボで共通化している。GT500ではトヨタ自動車、ホンダ、日産自動車の3社が基本仕様を定めたNRE(ニッポンレースエンジン)を搭載。環境技術を市販車にフィードバックすることを狙いに、ダウンサイジングや熱効率の向上、軽量化などが採用されている。時間当たりの燃料流量を制限した燃料流量リストラクターによる出力調整を行うのはこの一環だ。

 スーパーGTでは2020年シーズンから登場したクラス1規則準拠のマシンだが、レースフォーマットやイベント訴求点の違いを考慮し、エアロやエンジンの一部、タイヤ開発の関わる部分など、必要最小限の変更を加えた「クラス1+α」として導入している。このクラス1+αにのっとって、トヨタは「GRスープラ」、ホンダは「NSX」、日産は「NISSAN GT-R」をベースにしたマシンを開発、参戦しているのだ。


GT500にはトヨタが「GRスープラ」、ホンダが「NSX」、日産が「NISSAN GT-R」をベースにしたマシンで参戦している(クリックして拡大)

 DTMとの共通技術規則であるクラス1規則は、実は2021年シーズンからはスーパーGTだけが使用する規則となってしまう。DTMにはメルセデス・ベンツ、アウディ、BMWが参加していたが、2018年にメルセデス・ベンツが撤退。アウディも2020年シーズンをもって撤退した。BMWだけが残る形になり、事実上、クラス1規則を採用するフォーマットが消滅。ITRは2021年シーズンから「FIA GT3」の車両を使ったレースカテゴリーに変革することを決めた。

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