日本製鉄が国内の高炉と製造ラインを休止拡大も、年粗鋼生産1億トンへ3兆円投資:製造マネジメントニュース(1/2 ページ)
日本製鉄が2025年度をめどとする中長期経営計画を発表。高炉や製造ラインの休止の追加で国内製鉄事業の再構築を進めて早期の収益力回復を図るとともに、海外事業の深化と拡充、「ゼロカーボン・スチール」への挑戦、DX戦略の推進が柱となる。グローバル粗鋼生産能力については年間1億トンを目指し、5年累計の投資総額は3兆円に達する。
日本製鉄は2021年3月5日、2025年度をめどとする中長期経営計画を発表した。2020年2月に発表した生産設備構造対策からさらに追加して高炉や製造ラインの休止を進めることによる国内製鉄事業の再構築を進めて早期の収益力回復を図るとともに、海外事業の深化と拡充、脱炭素トレンドに対応する「ゼロカーボン・スチール」への挑戦、DX(デジタルトランスフォーメーション)戦略の推進が柱となる。国内生産体制の再構築や戦略商品への対応力強化のために行う2021〜2025年度の設備投資は2兆4000億円、事業投資も6000億円に上り総額で3兆円に達する。これらの施策により、2025年度時点でグローバル粗鋼1億トンの体制を構築するとともに、ROS(売上高利益率)とROE(株主資本利益率)で10%、D/Eレシオ(負債/資本比率)0.7以下の達成を目指す。
国内製鉄事業の再構築では「集中生産」「注文構成高度化」「設備新鋭化」の3つを軸に施策を進める。
まず、生産設備構造対策では、以下の製造ラインの休止を決めた。厚板事業の東日本製鉄所鹿島地区(以下、鹿島地区)の製造ラインは2024年度下期、建材事業の東日本製鉄所君津地区(以下、君津地区)の大形ラインと連続鋳造ラインを2021年度末、鹿島地区の大形ラインを2024年度末に休止する。
鋼管事業では、関西製鉄所和歌山地区(海南)のシームレス鋼管小径ミル2ラインのうち西ミルを2025年度末、君津地区の大径管(UO鋼管)ラインは2021年度末に休止する。UO鋼管については、既に2019年10月に鹿島地区のラインを休止しており、今回の君津地区での休止により事業撤退となる。
薄板事業のうち、めっきラインについては、君津地区の溶融亜鉛めっきラインを2024年度末、鹿島地区の酸洗ラインの一部設備を2020年度上期末に休止し、君津地区の他の製造ラインおよび名古屋製鉄所などのラインに生産を集約する。瀬戸内製鉄所阪神地区(堺)では、溶融亜鉛めっきラインの一部を2024年度末、溶融亜鉛・アルミめっきラインの一部を2022年度末に休止し、堺の他の製造ラインおよび九州製鉄所八幡地区に生産を集約する。また、ハイカーボン薄板については、瀬戸内製鉄所阪神地区(大阪)の全ラインを2023年度上期末〜同年度末に休止するとともに、関西製鉄所和歌山地区の全薄板ラインを2024年度末に休止する。これにより、両地区で生産しているハイカーボン薄板は、瀬戸内製鉄所阪神地区(堺)に集約され、その後のハイカーボン製品の生産は瀬戸内製鉄所阪神地区(堺)と九州製鉄所八幡地区との2拠点体制となる予定だ。
チタン・特殊ステンレス事業では、東日本製鉄所直江津地区の特殊ステンレス薄板関連ラインを2021年度末に複数休止し、日鉄ステンレス 山口製造所(周南エリア)に生産を集約する。併せて、関西製鉄所製鋼所地区のチタン原材料ラインも2022年度末に休止する。ステンレス事業を手掛ける日鉄ステンレスでは、衣浦製造所の冷延・焼鈍ラインを2021年度末に休止し、山口製造所に生産を集約する。これにより、衣浦製造所は既に公表されている熱延工場などの休止と併せて全ての生産設備を休止することになる。山口製造所でも、冷延・焼鈍設備の一部を2021年3月末〜2026年末、電気炉1基を2023年度末に休止し、鹿島製造所の焼鈍設備の一部も2021年6月末に休止する。
高炉や焼結、製綱などを含めた鉄源工程についても追加で休止を行う。鹿島地区で厚板、大形ラインを休止することから、これに合わせた全社鉄源バランスおよび同地区の一貫生産・出荷能力、コストなどを総合的に勘案して、第3高炉と関連設備を2024年度末に休止する。この高炉休止に合わせて、東日本製鉄所釜石地区向けの線材用鋼片の供給元は2025年から室蘭製鉄所になる。この鋼片供給体制の変更を踏まえて2022年4月に製鉄所体制を再編し、室蘭製鉄所は北日本製鉄所室蘭地区に、東日本製鉄所釜石地区は北日本製鉄所釜石地区となる予定だ。また、既に発表している関西製鉄所和歌山地区の鉄源設備の休止も、2022年度上期末から2021年度上期末に前倒す。
これまでの高炉休止は、八幡製鉄所(小倉地区)、瀬戸内製鉄所呉地区の第1と第2、関西製鉄所和歌山地区の第1の4基だったが、今回の発表で総計5基の高炉を休止することとなった。これにより、日本製鉄の国内高炉数は15基から10基となり、国内の粗鋼生産能力規模も20%減少し5000万トンから4000万トンに減少する。ただし、年間で1500億円の効果が得られ、20%以上の要員合理化も可能になるとしている。
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