車載リチウムイオン電池の市場は2024年に6.7兆円、電力貯蔵システムも需要拡大:電動システム
富士経済は2021年1月22日、リチウムイオン電池の市場調査結果を発表した。2024年の市場規模は車載用が2019年比2.6倍の6兆7403億円、民生用で小型のものは同15.9%増の1兆9810億円、電力貯蔵システム向けは同2.2倍の7990億円に拡大する見通しだ。世界各国の政策が普及を後押しする電動車や、リモートワークなど家で過ごす時間が増えたことによる新たな需要喚起で2021年以降の需要拡大が見込まれる。
富士経済は2021年1月22日、リチウムイオン電池の市場調査結果を発表した。2024年の市場規模は車載用が2019年比2.6倍の6兆7403億円、民生用で小型のものは同15.9%増の1兆9810億円、電力貯蔵システム向けは同2.2倍の7990億円に拡大する見通しだ。世界各国の政策が普及を後押しする電動車や、リモートワークなど家で過ごす時間が増えたことによる新たな需要喚起で2021年以降の需要拡大が見込まれる。
市場調査では、車載用リチウムイオン電池の市場規模は2023年に5兆円に達するとしている。2020年は世界的に新車生産台数が落ち込んだこともあり、車載用リチウムイオン電池の市場規模は前年比0.6%減の2兆5916億円で微減となった。各国が電動車普及政策を打ち出していることもあり、2021年以降は車載用リチウムイオン電池の市場は拡大に転じる。中国では202年末に電動車の購入補助金が終了する予定だったが、2022年末までの延長が決定。新エネルギー車(NEV)にハイブリッド車(HEV)が追加されたこともあり、電動車の需要が回復している。
米国では、カリフォルニア州に代表されるZEV(Zero Emission Vehicle)規制や電気自動車(EV)購入の税額控除が電動車の需要をけん引している。ZEV規制ではプラグインハイブリッド車(PHEV)や燃料電池車(FCV)もZEVに組み入れることが許容されているが、自動車メーカーは販売の一定比率をZEVとすることが求められている。欧州では電動パワートレインの種類は限定されないが、企業単位で販売車両のCO2排出量の平均値を算出し、基準以下にすることが求められる。そのため、リチウムイオン電池の需要も伸びている。
小型民生用は、ノートPCやスマートフォン、タブレット端末、ウェアラブル端末などコンシューマーエレクトロニクス製品、充電式電動工具やガーデニングツール、電動アシスト自転車(E-bike)や電動キックボード(E-scooter)が該当する。コンシューマーエレクトロニクス製品では、幅広い製品でラミネート型が採用されており、市場拡大が続いている。ノートPCではシリンダ型が主流だったが、ノートPC本体の薄型化によりラミネート型の比率が上がっている。リモートワークの拡大によるノートPCの需要も、小型民生用リチウムイオン電池の市場を伸ばしている。2020年は外出自粛を受けてガーデニングツール向けのリチウムイオン電池の需要が拡大。また、パーソナルな移動手段として、欧州や中国でE-bikeやE-scooter向けリチウムイオン電池の市場も成長しており、引き続き拡大が見込まれる。
電力貯蔵システム(ESS)や無停電電源装置(UPS)、携帯電話基地局(BTS)向けも成長を見込む。電力貯蔵システムでは、鉛蓄電池と比較して長寿命化と省スペース化が図れることからリチウムイオン電池の採用が進んでいる。欧州や北米、中国において、デマンドチャージ対策や太陽光発電の電力の自家消費、電力のピークシフト、系統安定化、アンシラリーサービスなど幅広い用途で電力貯蔵システムの市場が拡大。今後も需要が見込まれる。
米国では2020年からカリフォルニア州の新築住宅に太陽光発電システムの設置が義務化されており、太陽光発電システムと併設の電力貯蔵システムの需要が高まるとしている。カリフォルニア州以外でも、家庭用電力貯蔵システムの導入補助政策が施行されている。欧州でも、再生可能エネルギー導入補助金や税制優遇策が市場拡大を後押しする。
中国では電動車の開発が進展することにより大型リチウムイオン電池の生産が拡大し、電力貯蔵システムのコストも下がっている。中でも、正極材料にリン酸鉄リチウム(LFP)を使用したリチウムイオン電池は費用対効果が高く、電力貯蔵システム用では主流になるとみられる。また、データセンターや5G基地局、衛星基地局など「変電所の多機能統合」の推進も電力貯蔵システムの導入を後押しする。
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