製品化に欠かせない“製品の計画書”、企画と設計構想を考える:アイデアを「製品化」する方法、ズバリ教えます!(3)(2/3 ページ)
自分のアイデアを具現化し、それを製品として世に送り出すために必要なことは何か。素晴らしいアイデアや技術力だけではなし得ない、「製品化」を実現するための知識やスキル、視点について詳しく解説する。第3回のテーマは、製品化に欠かせない「企画と設計構想」だ。これらの取り組みにおける重要な視点、アプローチについて詳しく解説する。
「仕様を決める」ということ
製品仕様とは、例えばプロジェクターでは明るさや投影画面サイズ、掃除機では吸引力や騒音レベルなどのことである。表記方法には、JIS(日本産業規格)で規格化されたもの、該当する製品の業界で測定方法や数値の単位が慣例化されたもの、全く決まりのないものがある。これらは、前述の「志」をベースにして、ターゲットユーザーの使い方、市場動向、競合分析などから決めることになるが、あまりにも、技術的にもコスト的にも非現実であれば、設計構想で大きく変えざるを得ない。よって、企画時の事前調査はとても大切となる。
製品仕様は、一般的に数値や文字で表せるものが多いが、それ以外にも図やイラストで表すものもある。電気ポットを例にすると、主な構造、一般的な使用方法、洗浄方法などのことである。最終的に設計構想で決められた製品仕様は、発売前にはマーケティングの資料として使用され、製品が発売されるときには、カタログや取扱説明書に記載される(=一般に公開される)ため、簡単には変更できないことを頭に入れておきたい。
安全性や信頼性は、製品のカテゴリーによって異なる。安全性は一部が法規制として定められていたり、信頼性も一部はJIS規格で定められていたりする。また、社内の独自ルールとして定められているものもある。これらも仕様の1つとして考えることができる。
外観デザインも仕様の1つである。企画時には、例えば「ポケットに入り、片手で操作でき、ビジネスシーンで使うデザイン」のように表現することが多いが、設計構想ではこれをデザイン化したものを見られることが望ましい。
デザインには手描きスケッチ、2Dデータ、3Dデータ、モックアップなどがある。モックアップが最も実物感を得られるがコストも高額であるため、3Dデータが適切であろう。また、Webデザインや広告デザインなどのようにデザインにもいろいろなカテゴリーがあり、製品の場合はプロダクトデザインとなる。それぞれに専門のデザイナーがいることを知っておきたい。
設計構想では、仕様に関連する内容として「設計目標」をぜひ入れてほしい。設計者の基本業務は、仕様を満足する製品を設計することである。だが、設計者にとって技術的ハードルが高くない、過去の製品の技術を単に踏襲するだけのものであれば、設計者のモチベーションは上がらない。また、その製品を設計することによって、設計者ひいてはその会社の技術レベルが向上することもない。設計目標とは「部品点数は○点以下」「業界初のリサイクル材を使用」「既存製品から大幅に製造性や調整工程を簡略化」といった、設計力・技術力の向上につながるチャレンジ項目といえる。製品仕様のように一般に公開されるものではないが、仕様に関連する内容として設計目標を定めてほしい(図3)。
製品コスト、それを決める生産台数(ロット)と生産年数
企画の内容の1つである、生産台数と生産年数はとても重要な数値である。理由は、この2つの数値が製品コストを決めるからである。製品コストの一部である部品コストは「一度に購入する個数(ロット)」で決まってくる。もちろん、一度の購入数が多ければ(一度に多く製造すれば)部品コストは安くなる。理由は、その部品を製造する段取り(前準備)コストや部品の輸送コストが、一度に購入する部品の合計コストに加算され、それらが1個の部品コストに案分されるからである。
さらに、その製品の設計にかかる設計費(人件費×設計期間、試作費など)や部品、製品の製造に使用するオリジナルの設備、装置、治具の費用もあり、それらは基本的には総生産台数(=生産台数×生産年数)で案分されることになる(これ以外にも金型費、経費、販売費、一般管理費、組立費などもあるが、ここでは割愛する:図4)。
これらのことから、企画の段階で生産台数と生産年数を決めておかなければ、製品コストを決めることができず、いくら売っても損をすることになりかねないのだ。
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