解析結果の表示と解釈は実践に向けた最終関門!:構造解析、はじめの一歩(9)(1/3 ページ)
「構造解析」を“設計をより良いものとするための道具”として捉え、実践活用に向けた第一歩を踏み出そう。第9回は、基本的な解析を実践する上で、最終関門となる解析結果の表示と解釈について取り上げる。
はじめに
※注意※
- ヤング率、ポアソン比など、基本的な材料力学の知識があることを前提としています。材料力学の知識を持たずして解析を行うことは、免許を持たずしてクルマの運転をするのと同じことです。「危険」であることを心得ておいてください
- ソフトウェアのインストールや使用については、自己責任ということでお願いします
- 今回の記事は、連載第5回の「線形静解析」で説明した部分が大幅に省略されています。ぜひそちら(連載第5回)の記事に目を通してからご覧ください
そろそろ本連載も最終回が近づいてきました。これまで解説してきたことを理解していれば、大きな間違いをすることなく基本的な解析を実施できるでしょう。
ところが最終関門があります。それは“結果の評価と解釈”です。
解析そのものは、入力も出力も数字のカタマリです。それを可視化するのが「結果の表示」です。解析そのものは合っていても、結果の表示とその解釈が間違っていては台無しです。解析結果の表示と解釈はまさに「勝って兜の緒を締めよ」なのです。今回は解析結果表示のポイントと解釈について解説します。
重量が違うモノの強さが同じわけがない
解析のもとになった3D CADモデルと有限要素モデルは全くの別物です。最近の設計者向け3D CADにモジュールとして実装されている解析ソフトでは、あたかも3D CADモデルそのものが解析されたかのように見えるものがあります。「有限要素メッシュを見せない」などの演出もその1つです。“3D CADモデルと有限要素モデルは別物である”ことを意識しましょう。よって、3D CADモデルと有限要素モデルの重量が異なることがあり得るのです。
3D CADモデルと有限要素モデルの重量の確認は、本来であれば解析前のモデルのチェック時に行うべきです。しかし、3D CADモデルからのソリッド要素による自動メッシュ分割が主流となり、密度の入力ミスなどの根本的な間違いがなければ、3D CADモデルと有限要素モデルの重量の差異はほとんどなくなりました。
重量は振動解析では特に重要なので、実機、3D CADモデル、有限要素モデルの重量が大きく異なっていないことが重要です。
一般的に、実機よりも3D CADモデルの方が軽くなります。実機には、塗装、ハーネス、基板などの制御系の装置が実装されていますが、3D CADモデルでは省略されることが多いからです。これらの重量は、集中質量という有限要素や主要構造材の密度として加算する方法があります(図1)。
ボクシングの階級は17クラスに分かれています。体重の軽いクラスだと1.4kg違うだけで階級が異なります。体重が1.4kg違うだけでパンチ力が全然違うということです。当たり前のことですが「重量が違うモノの強さが同じわけがない」ということです。
まずは変形を確認
解析が終了したらいよいよ結果を表示します。まずは応力を見たいでしょう。でも、ここでぐっとガマンです。まずは変形図を確認します。一般的に部品の変形状態や変形量は目視できません。目視できるほどの変形が生じる現象であれば、大変形解析という非線形解析を行う必要があります。
現実には変形と応力は同時に発生します。しかし、解析の世界ではそうではありません。非常に乱暴な表現ですが、以前の連載からも分かるように有限要素法はたくさんのフックの法則を解いています。解析においてフックの法則で求めるべきは「伸びた長さ」です。
そこからひずみが計算され、そして応力が算出されます(図2)。
よって変形が間違っていると応力も間違っていることになります。簡単な因果関係です。
荷重のプラス・マイナスを間違えて指定していることがあります。変形図を見れば一目瞭然、指定した荷重の方向が正しいかどうかを確認できます。
さらに、変形量が妥当かどうかを数値として確認します。単位を間違えていると想定したよりも小さな、または大きな変形量となります。変形量が常識的な数値かどうかを確認してください。
線形静解析では、変形が小さいので変形図を実変形量で描いても全く分かりません。よって、変形量を何百倍かに拡大して変形図を描きます。解析に詳しくない人が見ると「えっ、こんなに変形するの!?」ということになるので、変形図をレポートなどに使う場合は必ず「変形量を○倍」と書いておきましょう。
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