工場の生産性に最も影響する「負荷計画」とは:工程管理は、あらゆる現場問題を解決する(4)(1/3 ページ)
工場における生産管理の根幹となる「工程管理」について解説する本連載。第4回は、工程管理の中でも最も重要な「負荷計画」を中心に説明する。
今回は、工程管理の中でも最も重要な「負荷計画」の話を中心に進めていきたいと思います。この負荷計画の良しあしが、コストや生産性を左右するといっても過言ではありません。作業負荷をできるだけ平準化するための究極に、いわゆる「1個流し」が手段としてあると考えると、この手法の理解をより深めることができると思います。
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1.負荷と能力の調整
前回解説した生産小日程計画の段階で、日々の細部について予定を決めるためには、各職場や各機械設備、作業担当者ごとに、手持ちの仕事量負荷と現有能力とを調べ、作業の配分を行って作業スケジュールを決めていく必要があります。これを「負荷と能力の調整」といい、この管理を「余力管理」といいます。
「生産進度管理」は、“作業”を予定に対する進みと遅れとの調整という側面から見ますが、余力管理は、“作業”を負荷と能力のバランスから見ます。この余力管理は、多品種少量生産や注文生産(個別生産)を主とする企業では、生産前に詳細な生産予定を決めることが困難な場合や、飛び込み品といわれる特急品などによる計画変更が発生しやすい場合には、特に重要な管理要素であるといえます。
余力管理の方式としては、例えば新規の受注追加が入ってきた場合に、日々の余力の変化状況を調べて対応する必要があるときなどは「ガントチャートによる余力管理」が有効です。総合的な余力管理としては、受入数と払い出し数をグラフへ打点していって仕掛かり量を管理する流動数曲線による余力管理がよく用いられます。
また、余力調整の具体的方法としては、能力不足の場合は残業・休日出勤で対応、他職場から応援を受ける、派遣社員やパートタイマー、アルバイトの活用、外注への展開などによって生産能力を一時的に増やすというような方策を選択します。
1.1 負荷工数の算出
生産大日程計画によって品種別の生産数が決定し、次に手順計画によってそれぞれの工程の作業方法や所要時間(標準時間×生産数量)が決定します。その後、全体としてどの職場やどの工程に、どれだけの人員や機械設備の台数が必要になるのか、1カ月分の作業量の集計によって明らかにしておく必要があります。次に、各職場の人員や仕事量の過不足を調整し、職場別、個人別、機械設備別などに、特定の工程や職種などに作業負荷が過度に集中しないように上述の余力調整をしながら仕事を割り当てます。
作業の負荷工数は、一般に次の式(1)で算出します。また、作業負荷工数と作業保有能力(人員と機械設備の生産能力)の調整を「工数計画」といいます。
1.2 作業保有能力の算出
人の作業能力と機械設備の持つ生産能力を計算します。作業の保有能力は、一般に次の式(2)で算出されます。算式の中でも“p×ρ”を労働効率といいますが、これを考慮しないで計算している事例が多く見受けられます。機械設備についても設備稼働率や故障率などを加味しながら同様の計算をします。
1.3 生産能力の過不足の調整
式(1)と(2)によって算出された作業負荷工数と作業保有能力を対比して、両者がピタリと一致すれば良いのですが、通常はどちらかが大きくなります。つまり、生産能力に対して負荷量の過不足が算出できますので、次のような調整が必要となります。
- 負荷量<保有能力……生産能力が余っている状態
- 人を他部門へ移動したり、稼働時間を短縮したりして、能力を調整する
- あまり良い方法ではありませんが、来月分の生産から適当な製品を前倒しで繰り入れたり、また、他部門から応援可能な仕事を探して取り込んだりして負荷量を能力に合わせたりする
- 負荷量>保有能力……生産能力が不足している状態
- 残業や休日出勤によって、稼働時間を延長して生産能力を大きくする
- 他の職場へ不足人員の作業応援を依頼し、他部門から所要人員を移動して能力を大きくする
- 他の職場でも作業が可能なものは、作業をそちらへ回して自職場の負荷を軽くする
- 次月へ繰り下げるなどして、後回しにできる作業は後で行う
- 外注化するなど、作業の一部を外へ委託する
- 最後の手段として、生産計画の変更を行う
このように、いろいろな方法で生産能力と負荷量との均衡を保つように調整します。負荷工数計画は、生産日程計画と密接な関係があり、バックワード方式(完成予定日に合わせる方法)、フォワード方式(着手予定日に合わせる方法)、ネック工程方式(隘路工程に合わせる方法)などによって負荷調整を行いながら生産日程計画を作成していきます。
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