欧州もゼロエミッション車普及で高い目標、「10年間で50倍は現実とかけ離れている」:自動車業界の1週間を振り返る(1/2 ページ)
みなさんおはようございます、土曜日です。1週間お疲れさまでした。仕事納めの日が見えてきましたね。寒い日が続いていますし、寒いどころか大雪の地域もありますが、暖かくしてお過ごしください。
みなさんおはようございます、土曜日です。1週間お疲れさまでした。仕事納めの日が見えてきましたね。寒い日が続いていますし、寒いどころか大雪の地域もありますが、暖かくしてお過ごしください。
さて、2020年12月17日に日本自動車工業会が開いた会見で、自工会の会長である豊田章男氏が、エンジン車の廃止に関して意見を述べたと話題になっていますね。「電動車=電気自動車」ではないということや、発電時のCO2削減などエネルギー政策の重要性、軽自動車を無視しない電動化を進めるべきであることなどについて言及したそうです。
メディアで働く人間の端くれとしては、豊田氏が政策だけでなく報道の姿勢まで指摘したのは耳の痛い話だと感じました。報道の在り方にもどかしさを感じる声は、私の身近なところからも聞こえてきます。実態にそぐわない対立構造で比較され、競合と比べて遅れていると指摘する記事が出てくるのは珍しくないようです。その人はB2B企業の方で、「分かる人が分かってくれていればいい部分もあるけれど、ネガティブな記事が一般の目に触れるのは嬉しくない」と言っていました。
個人的には、自動車の人(自動車産業従事者、自動車を取り上げる報道の担当者、自動車を所管する官公庁)だけでこのことを話したり伝えたりするのは限界があると感じています。クルマの走行中にCO2が出なければいいという次元ではないからです。また、電力会社、バッテリーの材料や生産を支える化学業界、モノや人の移動の傾向、都市計画など、さまざまな立場から最新の数字を出し合い、前提をそろえないと、生産から実際の使用場面まで実質的なCO2排出量をパワートレインごとに比べるのも簡単ではありません。
新しくない数字を基にしてどれがCO2排出量の少ないパワートレインかを断じたり、あまり一般的ではない使用期間を挙げて「○年使えば××の方がCO2排出量が少ない」と評価したりして、誰かが実際以上に低い評価を受けるのは、業界のプラスになりません。
政治が業界を置き去りにするのは欧州も同じであるようです。欧州委員会が発表した「2030年までに少なくとも3000万台のゼロエミッション車を普及させる」という目標に対し、欧州自動車工業会(ACEA)は「このビジョンは今日の現実からかけ離れている」と発信しました(※)。欧州委員会の目標を達成するには、電気自動車(EV)や燃料電池車(FCV)といったゼロエミッション車を今後10年間で50倍に増やす必要があるのです。
充電インフラについて欧州委員会は2030年までに少なくとも300万カ所が必要だと見積もっていますが、EU全体では充電ステーションは20万カ所以下です。15倍以上に充電ステーションを増やさなければなりません。欧州自動車工業会では、EUから各国政府に充電インフラへ投資を促すよう、呼びかけているとのことです。東京都内に充電ステーションを増やすのも簡単ではないように思います。東京都内では、ただでさえ目的地の近くに十分な数の駐車場があるとは限らないのに、今後さらに充電する場所を用意できるのでしょうか?
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