架台内の熱源とその影響を考慮して解析を行う!:実例で学ぶステップアップ設計者CAE(7)(1/2 ページ)
初心者を対象に、ステップアップで「設計者CAE」の実践的なアプローチを学ぶ連載。詳細設計過程における解析事例を題材に、その解析内容と解析結果をどう判断し、設計パラメータに反映するかについて、流れに沿って解説する。第7回は、架台内の熱源とその影響を考慮して解析を進めていく。
前回は、架台中央部において“許容できない変形が生じる”という解析結果から、フレーム構造の変更を行いました。実際に製作してから問題が判明しても、溶接構造の架台を補修することは困難です。
1.筆者の架台設計の経験(CAE活用以前)
図1をご覧ください。これは筆者がCAEを使用する以前に、実際に設計した架台の事例です。
架台の正面と背面(図1矢印)に“電装盤(制御系/電源系)を収納する”という設計条件から、開口部を設けました。角形鋼管□50×50×3.2t[mm]、全体サイズが2mの溶接による架台でしたが、実際の納入品を見た限りは「剛性上問題ない」ように感じました。
ですが、組み立てが進み、架台上面のベース板に複数のユニットが設置されると、組立部門から「ユニット内の精度が出せない!」という指摘を受けました。
組立部門では、まずベース面のレベル(水平)出しを行った後、ユニットを設置します。このベース面は、ユニットの調整基準となるはずですが、設置したユニットの重量により架台全体が変形してしまい、「調整できない」という事態に陥りました。このままでは、装置が動作する状態になっても、ユニットの動きに伴って、変形がさらに進んでしまうことが予測できました。
この架台は、図2のようなイメージで変形すると考えられ、この変形を抑える対策に時間をかけることになりました。当時は、設計計算による検証が必要でしたが、今ではCAEによって事前検証を容易に行うことが可能です。最近あまり聞かれなくなった言葉ですが、CAEは「フロントローディング」としての効果が期待できます。
≫フロントローディングとは
製品製造やシステム開発のプロセスで、初期段階に労力や資源を投入して、後工程での設計変更や問題を未然に回避することで、負荷を前倒しする活動のことです。CAEを使用してシミュレーションを行うことで、実製作前にリスクを洗い出し、設計を見直すことにより、問題を未然に防止することが可能です。
≫固有値解析とは
解析依頼として多い、振動に関する解析で、振動の特性の固有振動数、固有モードを調べます。この解析は、振動特性を見るだけなので、解析対象に対しての荷重設定は必要ありません。解析結果として得られるのは変位量そのものではなく、固有振動数と相対的な位置関係を示すのみの無次元の値です。具体的に何ミリという数値を得るものではありません。
また、固有振動数では、減衰を考慮していません。この解析結果から共振を検討できます。例えば、求められた固有振動数と同じ周波数を発生する要因があった場合、解析対象となったものの振幅は増幅してしまいます。
周囲の駆動源により生じる振動数が分かり、解析結果でこれと同じ固有振動数を得た場合、設計段階でその対策が必要になります。
2.モデル変更後の解析
前回変更したモデル形状から、さらに中央部に追加した角形鋼管部が床と接することができるように、再度モデルを修正し(図4)、解析を行いました(図5、図6)。
この解析結果から分かる通り、中央部の変位は解消されました。変位が大きな部分も認められますが、最大値は前回の中央部0.345mmに対して、1桁小さな値となり、0.05mmとなることから、この構造を採用して設計を進めても問題ないといえるでしょう。
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