「歩いて測定」で作業を大幅効率化、ウェアラブル型の3D計測デバイスの実力:スマートファクトリー(1/3 ページ)
2020年9月末、ウェアラブル型の3D点群計測用デバイス「NavVis VLX」が発売された。従来の計測デバイスと違うのは、計測者がデバイスを身に付けて、実際に施設内を歩き回りながら計測を行う点だ。ウェアラブル型を採用することにはどのようなメリットがあるのか。NavVis VLXの国内販売を担う構造計画研究所の担当者に話を聞いた。
スマートファクトリー化を推進する中で、工場やプラントなど施設内の3Dデータ化に取り組む企業は少なくない。工場内環境を正確に把握することで、新設備を用いた生産ラインの検証や、AGV(無人搬送車)など各種自動化ロボットの走行シミュレーションなどが格段に取り組みやすくなるからだ。
※【訂正】構造計画研究所の申し入れにより、初出時に記載していた出資金額を削除しました。
3D-CAD化にはLiDAR(ライダー:Light Detection and Ranging)など、測距用機器を搭載した計測デバイスを用いる。既にさまざまなタイプの製品が市場に出ているが、2020年9月末、その中でもひときわ目を引くフォルムの計測デバイスが発売された。ドイツのスタートアップNavVis(ナビビズ)が開発したウェアラブル型3次元計測デバイス「NavVis(ナビビズ) VLX」(以下、VLX)である。
「ウェアラブル」の言葉の通り、VLXの使用者は、自身の体にデバイスを装着し、実際に施設内を歩き回りながら測定を行う。ウェアラブル型の計測デバイスには具体的にどのようなメリットがあるのか。また、計測作業をどのように変えることができるのか。VLXの国内販売を行う構造計画研究所 製造企画マーケティング2部 部長の高根健一氏と、同 製造企画マーケティング2部の松山祐樹氏に話を聞いた。
ドイツのスタートアップが開発
VLXはLiDARによる3次元計測を実現する移動式のウェアラブル型計測デバイスである。2013年にドイツで立ち上がったミュンヘン工科大学発のスタートアップ、NavVisが開発した。NavVisは、VLXの前世代機にあたる、トロリー(台車)型計測デバイス「NavVis M6」(以下、M6)などのスキャナー製品を展開するメーカーだ。ダイムラーやBMW、シーメンスなどの企業では、NavVisの製品が既に本格的に導入されているという。構造計画研究所では2015年からNavVis製品の国内販売権を取得した。それ以降も、2018年にはNavVisに対して出資を行うなど連携強化を図っているという。
本体重量は約10kgで、サイズは幅330×奥行き560×高さ1080mm(製品展開時)。デバイス装着時の正面と頭頂に当たる部分には、測距用のVelodyne製LiDARを1台ずつ、合計2台搭載している。最大計測距離は100mで、有効計測距離は50m。頭頂部には2000万画素のカメラを4台搭載しており、点群データと併せて周囲の360度パノラマ画像も撮影できる。記録用ストレージとしてSSDを搭載可能で、計測した点群データや画像などを保存できる。
リチウムイオンバッテリーを2個搭載することで、最大約1.5時間までの連続稼働に対応する。「1.5時間あれば、屋内では2000m2、屋外なら5000m2の範囲が測距可能だ。実際に、以前顧客の工場で計測した際には、4300m2程度の広さがある敷地を1.5〜2時間程度で計測できた。仮に1日稼働すれば屋内であれば1万m2から1万5000m2、屋外であれば2万〜2万5000m2の範囲を計測可能だ」(高根氏)。
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