withコロナ時代に果たすべきIoTの役割、AIによる「社会の自動運転」を見据えよ:ET&IoT Digital 2020(1/2 ページ)
オンライン開催されている「ET&IoT Digital 2020」において、東洋大学 INIAD 学部長の坂村健氏が「ウィズコロナ時代のIoT」をテーマにとする基調講演に登壇。コロナ禍におけるIoTの役割や、坂村氏が会長を務めるトロンフォーラムの活動を紹介した。
2020年11月16日〜12月18日にオンラインで開催されている「ET&IoT Digital 2020〜イノベーションの社会実装を加速させるエッジテクノロジー総合展〜」において、東洋大学 INIAD(情報連携学部) 学部長の坂村健氏が「ウィズコロナ時代のIoT」をテーマにとする基調講演に登壇した。同講演では、コロナ禍におけるIoT(モノのインターネット)の役割および坂村氏が会長を務めるトロンフォーラムの活動を紹介した。
「非接触」や「3密回避」に役立つIoT
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の社会への影響が長く続くことを指して「withコロナ」と呼ばれる時代に入っている。坂村氏は、このWithコロナの時代において「COVID-19対策だけでなく、今後は鳥インフルエンザなどCOVID-19以外の感染症の流行も考えられる。それらに対する社会体制を整える意味でも、IoTの技術は非常に重要だ」とIoTの必要性を強調した。
また、COVID-19対策は、人それぞれを認識しケアする機能の集合である以上、バリアフリーを実現する技術でなければならないことを訴えた。例えば、多様な人々が健康で不自由なく活動できる環境を実現するためには、さまざまな技術で個々に対応する必要があるが、音声認識をはじめとしたUI(ユーザーインタフェース)によって手や視覚が不自由な人にも利用できるようにする必要がある。触らなくても開閉ができるドアは体が不自由の人にとっても優しいドアであり、転倒や体調不良を察知するセンサー群は体の弱い人を守る機能としても利用できなければならない。
それらの具体例として取り上げたのが、コロナ禍で注目を浴びているテーマの一つである「非接触」である。個人端末からの環境への制御、音声・ジェスチャー制御、非接触スイッチなどが現在注目されているとともに、将来的に「何もしないで快適ならスイッチに触らなくてもいい」という環境制御の自動最適化が図れるさまざまな技術開発も進んでいることなどを紹介した。
そこで用いられる環境制御のインタフェースは、オープンAPI化されることで個人のスマートフォンからでも制御することが可能になる。ただし、坂村氏は「IoTにより環境制御をあらゆる人ができるようにすべきだが、これに合わせて条件を満たした人だけが制御できるというアクセス制御を導入することも大切だ。オープン制御にはアクセス制御の仕組みも必要となる」として、状況認識による制御対象の選択と権限処理の重要性を訴えた。続けて「スイッチ操作のたびに操作画面を呼び出すことは煩雑であることから、状況認識により『その時・その場・その人』ができる制御スイッチを常時端末の画面トップに自動的に表示されるようなシステムが求められる」(坂村氏)とした。
COVID-19の感染拡大を抑制する「3密回避」でもIoTの活用が重要になる。まずは、3密の状態になっているかどうかを知ることが重要であり、そこから3密の状態を解消するにはロボットの利用で他人との接触を最小限度に抑えることが効果的だ。3密を知るには、湿度、温度、CO2濃度、人感など各種センサーを一つのパッケージにして、そこから各種データを取得することで対応できる。
例えば、スマートロッカーなどは、配達者が人と接触することなく荷物を運び入れておくことができる仕組みとなっている。ロボットについてもさまざまな研究開発が進められており、東洋大学のINIADでは車いすの自動化と連携するシステムとして、車いすが部屋から出ると「INAD API」を経由して自動的に照明を消したり、エレベーターを自動呼び出したりといった実験を行っている。
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