この記事は、2020年10月2日発行の「FAメールマガジン」に掲載されたMONOistの編集担当者による編集後記の転載です。
スマート工場は製造業にとってオワコンなのか
MONOistでは5年以上にわたり、インダストリー4.0をはじめスマート工場化への取り組みを積極的に取り扱ってきました。まず、労働人口の減少や熟練技術者の引退、グローバル化、製品の複雑化などのさまざまな動きを見て、製造業の持続可能性を考えた場合、人手のみに頼るやり方では遅かれ早かれ限界が来るのは明らかでした。そして、何らかの技術でこうした課題を乗り越える必要があるという場合に、最も進歩が著しいデジタル技術を活用しないという手はなく、最も合理的だと考えたからです。
しかし、製造現場にデジタル技術を導入する場合でも安易にITの論理だけで進めるのは危険だと考えていました。グローバルで見ると、日本の製造業は世界でもトップを争う企業が数多く存在し、特に製造技術では高い評価を得ています。しかし、ITで日本は先進国とはいえない状況です。この中で製造現場にデジタル技術を入れるとなった場合に、ITの論理だけで話を進めると「現場力」ともされる日本の製造業の強みが失われるのではないかと危惧したのです。
そこで「日本の強みを生かしたデジタル化やスマート工場化」を焦点とし、さまざまな団体活動や、成功事例などを積極的に取材してきました。取材を重ねていると、徐々にですが成功事例は増え、積極的に取り組む企業も着実に広がってきているように感じていました。
製造業のデータ活用への動きは停滞へ
だからこそなのですが「2020年版ものづくり白書」の「製造業のデータ活用」の調査結果にショックを受けました。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- スマートファクトリー化がなぜこれほど難しいのか、その整理の第一歩
インダストリー4.0やスマートファクトリー化が注目されてから既に5年以上が経過しています。積極的な取り組みを進める製造業がさまざまな実績を残していっているのにかかわらず、取り組みの意欲がすっかり下がってしまった企業も多く存在し2極化が進んでいるように感じています。そこであらためてスマートファクトリーについての考え方を整理し、分かりやすく紹介する。 - 見えてきたスマート工場化の正解例、少しだけ(そもそも編)
製造業の産業構造を大きく変えるといわれている「第4次産業革命」。本連載では、第4次産業革命で起きていることや、必要となることについて、話題になったトピックなどに応じて解説します。第28回となる今回は、スマート工場化において見えてきた正解例について前提となる話を少しだけまとめてみます。 - “不確実”な世の中で、企業変革力強化とDX推進こそが製造業の生きる道
日本のモノづくりの現状を示す「2020年版ものづくり白書」が2020年5月に公開された。本連載では3回にわたって「2020年版ものづくり白書」の内容を掘り下げる。第2回では、“不確実性”の高まる世界で日本の製造業が取るべき方策について紹介する。