激動のモビリティ業界が今取り組むべき働き方/業務プロセス変革の方向性:PTC Virtual DX Forum Japan 2020(1/2 ページ)
PTCジャパン主催のオンラインイベント「PTC Virtual DX Forum Japan 2020」のキーノートに、同社 インダストリー第2事業部 執行役員 専務の小笠原誠氏が登壇し、「激動のモビリティ業界『CASE』そしてアフターコロナで求められるデジタル変革とは」をテーマに講演を行った。
PTCジャパンは2020年8月20日〜9月25日までの期間、オンラインイベント「PTC Virtual DX Forum Japan 2020」を開催。そのキーノートに、同社 インダストリー第2事業部 執行役員 専務の小笠原誠氏が登壇し、「激動のモビリティ業界『CASE』そしてアフターコロナで求められるデジタル変革とは」をテーマに、モビリティ(自動車)業界におけるデジタルトランスフォーメーション(DX)の実現に向けた方向性とPTCの役割について解説した。
モビリティ業界を取り巻く環境
ご存じの通り、モビリティ業界は「100年に一度の大変革期」を迎えている。トレンドに目を向けてみると、「CASE」(コネクテッド、自動運転化、シェアリング/サービス、電動化)に加え、グローバル化やMaaS(Mobility-as-a-Service、自動車などを所有せずサービスとして利用すること)への対応などが急務となっており、各社が取り組みを加速させている。
その一方で、自動車の自動化、電動化、コネクテッド化などを背景に、ソフトウェアの依存度や重要性が高まり、製品開発が複雑化する中、自動車メーカーは製品の市場投入サイクルを加速させ、かつ環境などへも配慮した魅力ある車両を提供することで、ブランド競争にも打ち勝たなければならない。これらに加え、社内ではハードウェアとソフトウェアの開発サイクルの統合および協調を進めつつ、深刻な人材不足、熟練技術者の高齢化、スキルギャップの拡大といった大きな課題にも向き合う必要がある。
モビリティ業界は以上のようなトレンドへの対応と、古くて新しい課題への取り組みを推進しつつ、さらに今後はWP29のサイバーセキュリティとソフトウェアアップデートの国際基準の準拠にも取り組まなければならない状況にある。
「このような厳しい環境の中、モビリティ業界の多くの企業が、設計、調達、実験、生産から、流通、販売、使用展開までの製品ライフサイクルにおける各フェーズのあらゆる情報やデータをつなぎ、デジタルスレッドを実現して、バリューチェーン全体でシームレスなデータの流れを作り出そうと注力してきたと推測される。だが、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的流行により状況が一変。突然の出来事に戸惑われた企業も多かったのではないか」(小笠原氏)
ニューノーマルに向けた業務を止めない働き方
ここで小笠原氏は、今回のような非常事態、コロナ禍において業務を止めないために必要な3段階のアプローチを紹介。まず、最初のフェーズでは、直近の緊急事態における従業員の安全確保を最優先し、リモートツールやクラウドを活用した緊急対応を実践。次のフェーズでは、感染拡大第2波の影響を最小限に抑え、事業継続リスクを緩和させるために、AR(拡張現実)などを活用したノウハウや知のデータベース化に取り組むべきだという。最後のフェーズでは、ニューノーマル(新常態)に向けた新たな仕事の在り方や抜本的なプロセス変革を実現するために、AI(人工知能)を活用した設計自動化や、ECM(Engineering Chain Management)とSCM(Supply Chain Management)の融合などを推進し、DX戦略を本格化する必要があるとの考えを示す。
そして、この指針を踏まえたこれからの、ニューノーマル時代の働き方像として、小笠原氏は「従来の働き方は、関係者(人)や設備(モノ)が近距離にある環境で作業を行い、問題発生時などにおいても複数の人の力で協調対応してきた。しかし、これからは近距離環境で高効率に作業を実施しつつ、問題発生時は複数の関係者があたかも現場対応しているかのような感覚で効率的に業務ができる環境が求められる。また、そのさらに先では、リモートで高効率な現場作業を支援し、作業、是正、補正も自律化/機械化/自動化されていく働き方へと変わっていくことが考えられる。これらはクラウドやAR、コラボレーションツールなどによって実現可能な世界だといえる」(小笠原氏)。
モノと人とデジタルの優位性をつなげ価値を最大化する
このような次世代の働き方は、物理的な力と一貫性のある「設備(モノ)」、高い認識力と構想力のある「遠隔地にいる人(リモート)」、行動力と推進力のある「現地にいる人(現場)」、高い計算能力を有する「デジタル」それぞれの優位性をつなげることで価値を最大化できるという。
「例えば、ニューノーマル時代における工場をイメージしてみると、リモート(遠隔地)から現場の事象の把握や指示が可能となり、生産や設備のあらゆるデータが蓄積され、これらを活用することで現場作業者も直接的な現地支援などを受けることなく業務を遂行できる。もちろん、生産設備も自律化され、現場作業もロボットの活用により自動化されている。このように、デジタルと人、モノの融合により、リアルとバーチャルを活用した新たな働き方、労働力が生まれる」と小笠原氏は述べる。
講演では、PTCのARソリューション「Vuforia Studio」とマイクロソフトの「HoloLens 2」を活用したVolvo Group(ボルボ)による検査エクスペリエンスの事例を紹介。「この検査プロセスのデジタル化により、品質向上とコスト削減を可能にした」(小笠原氏)。
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