国内初の自律走行バスが走る、羽田空港跡地のスマートシティーが本格稼働:自動運転技術(1/2 ページ)
羽田みらい開発が手掛ける大規模複合施設「HANEDA INNOVATION CITY」が2020年9月18日、本格稼働を開始した。「先端」と「文化」の2つをコア産業に位置付けており、これらのうち「先端」を意識したスマートシティー関連の取り組みとなる、モビリティやロボティクスの実証実験を積極的に行う“場”としても期待を集めている。
羽田みらい開発が手掛ける大規模複合施設「HANEDA INNOVATION CITY(略称:HICity)」が2020年9月18日、本格稼働を開始するとともにメディア内覧会を行った。HICityは「先端」と「文化」の2つをコア産業に位置付けており、これらのうち「先端」を意識したスマートシティー関連の取り組みとなる、モビリティやロボティクスの実証実験を積極的に行う“場”としても期待を集めている。
特別装置自動車が自律走行バスとして定常運行するのは国内初
HICityは、羽田空港第3ターミナル(旧国際線ターミナル)周辺の再開発エリア「羽田空港跡地」の第1ゾーン(広さ約16.5ha)のうち約5.9haの敷地面積を使って建設された大規模複合施設だ。鹿島建設、大和ハウス工業、京浜急行電鉄、日本空港ビルデング、空港施設、東日本旅客鉄道、東京モノレール、野村不動産パートナーズ、富士フイルムの9社が出資する羽田みらい開発が、東京都大田区から区有地を約50年間借り受け、2017年から開発を続けてきた。京浜急行電鉄と東京モノレールの天空橋駅に直結する地上11階、地下1階、延べ床面積13万1000m2の建屋に、研究開発施設(ラボ・大規模オフィス)、先端医療研究センター、会議場、イベントホール、日本文化体験施設、飲食施設、研究・研修滞在施設、水素ステーションなどが設けられている。
羽田みらい開発が幹事を務める「羽田第1ゾーンスマートシティ推進協議会」は国土交通省スマートシティモデル事業の「先行モデルプロジェクト」に選定された。そこで同社は、HICityが掲げる「先端」を代表する取り組みの一つとして、自律走行バスの恒常的導入と、施設内循環バスとしての運行などに向けた実証を行うことを決めている。
この自律走行バスは、羽田みらい開発の他、鹿島建設、ソフトバンク子会社のBOLDLY(2020年4月にSBドライブから社名変更)、マクニカ、日本交通の5社の協力によって定常運行が行われる。使用する車両は、フランスのナビヤ(Navya)製の「NAVYA ARMA(ナビヤ アルマ)」で、一般的な運転席やハンドルなどを持たない「特別装置自動車」※)である。特別装置自動車が自律走行バスとして定常運行するのは、HICityが国内初の事例となる。
※)特別装置自動車:道路運送車両の保安基準第55条による基準緩和認定と、道路交通法第77条による道路使用許可を受けることで公道走行が可能になる。
NAVYA ARMAは、自動運転車両の運行を遠隔地で管理・監視するBOLDLYの自動運転車両運行プラットフォーム「Dispatcher(ディスパッチャー)」を活用して、HICity構内における移動の利便性を向上させる無料の構内循環バスとして運行される。NAVYA ARMAの走行の安全性を確保するため車内に常駐する運転手(保安員)や、Dispatcherを用いて運行を管理するオペレーターの業務は、当初はBOLDLYが担当するが、将来的には日本交通に移管する予定だ。NAVYA ARMAの輸入、販売およびメンテナンスのサポートはマクニカが行う。
HICityの2階をつなぐ屋外通路のイノベーションコリドーでは、香港のパーセプティン(PerceptIn)が開発した自律走行低速電動カートを運行させる計画だ。Dispatcherを使って、NAVYA ARMAと自律走行低速電動カートを同時に運行管理する実証実験も行う。
なお、HICity内の人やモビリティ、ロボットなどのリアルタイム位置情報は鹿島建設の空間情報データ連携基盤「3D K-Field」に集約される。Dispatcherの連携により、施設管理者は車両の位置情報などの運行情報を3D K-Fieldで確認することができ、今後車両運行管理業務の効率化に役立てられるという。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.