コロナ禍克服の“先”を目指すニューヨークのスマートシティー:海外医療技術トレンド(63)(4/4 ページ)
連載第52回で、欧州の保健医療機関による気候変動/環境への取り組みを取り上げた。今回は、スマートシティーと健康/環境の観点から、米国ニューヨークの取り組み事例を紹介する。
ニューヨーク市のスマートシティーを支えるオープンデータ戦略
そして、データ利活用の観点から、ニューヨーク市のスマートシティーを支える共通基盤となっているのが、オープンデータ戦略だ。図4は、ニューヨーク市のオープンデータ・ポータル「NYC OpenData」(関連情報)であり、市長データ分析室(MODA)と情報技術通信局(DoITT)が運用している。
ニューヨーク市は、保有データのオンライン公開を2009年に開始した。その後、オープンデータ条例(2012年制定)に基づき、2018年末までに全てのオープンデータを単一ポータル上で公開すべく作業を行った。そのために必要なオープンデータのポリシー、相互運用性、技術規格などの標準化に向けた取組も行い、成果物をGitHub上に公開している(関連情報)。
参考までに、図5は、「NYC OpenData」に収載されたニューヨーク市のCOVID-19関連データセットである。
ユーザーは、標準化されたAPIを介して、「NYC OpenData」に収載されたオープンデータにアクセスできるようになっている。多様性を価値創造の源泉とするニューヨーク市だけに、「アクセシビリティー」や「インクルージョン」は最優先課題だ。
なお、ニューヨーク市は、2019年9月1日、「オープンデータの次の10年:2019年みんなのためのオープンデータ進捗報告書および計画」を公表しており(関連情報)、今後の10年に向けたロードマップの中で、以下のような目標を掲げている。
- ユーザーエクスペリエンスの改善
- ユーザーに優しい動的プラットフォームの提供
- ニューヨーク市に関するデータ向けリポジトリの構築
- 都市の機能の強化
- オープンデータ・コーディネーター(ODC)による支援の改善
- データセット公開の簡素化
- NYCオープンデータ・ポリシーおよび評価手法の開発
- コミュニティーの構築
- インパクトと成功に関するストーリーの共有
- 「みんなのためのオープンデータ」の約束の達成
ニューヨークはスマートシティー国際比較のベンチマーク
日本でも、国家戦略特区を活用した「スーパーシティ構想」(関連情報)に基づく実証実験プロジェクトが企画されており、健康やウェルビーイングに関連する製品・サービスの展開を想定したケースも多く含まれている。COVID-19危機の克服に向けた経済再開戦略、今後の10年に向けたオープンデータ戦略、2050年を見据えた長期的なスマートシティー戦略などを通じて、明確な目標・イニシアチブや評価指標を設定して、それらの成果を継続的に公開し、必要に応じて軌道修正していくニューヨーク市は、国際比較のベンチマークとして、日本国内でも有効活用できるはずだ。
筆者プロフィール
笹原英司(ささはら えいじ)(NPO法人ヘルスケアクラウド研究会・理事)
宮崎県出身。千葉大学大学院医学薬学府博士課程修了(医薬学博士)。デジタルマーケティング全般(B2B/B2C)および健康医療/介護福祉/ライフサイエンス業界のガバナンス/リスク/コンプライアンス関連調査研究/コンサルティング実績を有し、クラウドセキュリティアライアンス、在日米国商工会議所、グロバルヘルスイニシャチブ(GHI)等でビッグデータのセキュリティに関する啓発活動を行っている。
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