ブリヂストンは“強いリアル”とDXで技術イノベーション、東京・小平を再開発:研究開発の最前線(1/2 ページ)
ブリヂストンは、2020年7月に発表した中長期事業戦略構想「Bridgestone 3.0」で重要な役割を果たす技術イノベーションの方向性について説明。ブリヂストン技術センターや東京工場が位置する東京都小平市の拠点を再開発し、新たなイノベーション拠点となる「Bridgestone Innovation Park」を開設する。
ブリヂストンは2020年9月15日、オンラインで会見を開き、同年7月に発表した中長期事業戦略構想「Bridgestone 3.0(第三の創業)」で重要な役割を果たす技術イノベーションの方向性について説明した。会見の会場となったブリヂストン技術センターや東京工場が位置する東京都小平市の拠点を再開発し、新たなイノベーション拠点となる「Bridgestone Innovation Park」を開設する。2020年11月に一般公開予定の技術ショールーム「Bridgestone Innovation Gallery」を皮切りに、2021年末までにイノベーションセンターの「B-Innovation」、ミニテストコースの「B-Mobility」を開設し、グローバルの技術イノベーション連携の中核となるCoE(Center of Excellence)として強化していく方針だ。これらBridgestone Innovation Park第1期の総投資額は約300億円である。
ブリヂストン 代表執行役 Global CEOの石橋秀一氏は「2050年を見据えて、サステナブルなソリューションカンパニーを目指すBridgestone 3.0を支えるのが技術イノベーションだ。1931年創業の当社は、1962年にはここ小平に技術センターを設立し、1979年発売の『POTENZA』、1981年発売の『REGNO』に代表されるさまざまな製品を投入してきた。今後のBridgestone 3.0を見据えていく中では、MaaS(Mobility as a Service)やCASE(コネクテッド、自動運転、シェアード、電動化)に対応する革新的なタイヤが必要になる。Bridgestone Innovation Parkはそのためのグローバル拠点だ」と語る。
Bridgestone Innovation Parkは、同拠点へのエントランス施設も兼ねる技術ショールームのBridgestone Innovation Galleryの他、イノベーションセンターのB-Innovation、ミニテストコースのB-Mobilityから構成される。「Bridgestone Innovation Parkでは、さまざまなパートナーと共感、共議、共研、共創を進めていく。当社の最新技術提案を見て触れられるBridgestone Innovation Galleryは、共感の場として重要な役割を果たす」(石橋氏)という。また、B-InnovationとB-Mobilityでは、リアルとデジタルを組み合わせて「すぐ形にして、すぐに試す」を繰り返すアジャイルな開発を可能にしていく。
「Bridgestone Innovation Park」の構成。技術ショールームの「Bridgestone Innovation Gallery」、イノベーションセンターの「B-Innovation」、ミニテストコースの「B-Mobility」から構成される(クリックで拡大) 出典:ブリヂストン
そして、Bridgestone Innovation Parkでは、グローバルの技術イノベーション連携の中核として、イタリア・ローマの「Digital Garage」、米国オハイオ州アクロンの「Mobility Lab.」との連携も進めていくことになる。
難易度が高い研究開発から生まれる“匠の技”でゴムを極める
会見では、技術トップであるブリヂストン 執行役専務 Global CTOの坂野真人氏が、技術イノベーションの考え方について説明した。Bridgestone 3.0で目指すサステナブルビジネスモデルは、社会価値と顧客価値の創造を可能にし、競争優位性の源泉となるものであり「これを技術イノベーションで支えていく」(坂野氏)という。
ブリヂストンの技術イノベーションの基盤となるのが、さまざまなタイヤ製品の開発を支えてきたゴムに関する技術である。坂野氏は「ゴムは粘弾性を持つが、早く伸ばすとき、遅く伸ばすとき、大きく伸ばすとき、小さく伸ばすとき、そして温度環境によって硬さが変わるため、研究開発対象として極めて難易度が高い。そのような難しさを解決してきたのは、技術者の知見や経験、ノウハウを生かした“匠の技”だ。この匠の技によって、ゴムを極めたという“強いリアル”がブリヂストンにはある。これに、当社の考えるDX(デジタルトランスフォーメーション)を掛け合わせることで技術イノベーションを生み出していく」と強調する。
ここで言うブリヂストンの考えるDXは、市場から得た情報を基に新たなソリューションを提供する方向性と、エンジニアリングチェーンにフィードバックして新たな商品戦略に還元する方向性の2つになる。「市場から得たタイヤデータ、モビリティデータを、ブリヂストンならではのアルゴリズムで分析し、ソリューションに昇華したり、エンジニアリングチェーンにスパイラルアップしたりして新たな価値を生み出す」(坂野氏)という。
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