CANの電圧および電源の課題への対応:よくあるCANの質問(2)(2/2 ページ)
第2部となる今回は、消費電力についてと、CANアプリケーションに電圧レールが複数ある場合の設計方法に注目します。
質問2
同じバスで5Vと3.3VのCANトランシーバーを混在させることはできますか?
はい、できます。3.3V CANトランシーバーでは、相手のCANトランシーバーが5Vまたは3.3Vのどちらであってもメッセージを正しく送受信できるように、リセッシブレベルと、ドミナントとリセッシブの閾値が設計されています。3.3V CANトランシーバー・ファミリには、1.85Vと2.3Vの2つのリセッシブレベルが存在します。「SN65HVD230」のような車載3.3V CANバス・トランシーバーは、5V CANトランシーバーとの連携が最適になるよう考えられた2.3Vのリセッシブレベルを備えます。「TCAN330」のようなCAN-FD機能付き3.3V CANトランシーバーも、5V CANトランシーバーと一緒に運用することができますが、個々のデバイスの電磁干渉を最小限に抑えるために、1.85Vのリセッシブレベルで設計されています。
ビルおよびセキュリティオートメーションや空調システムなどの産業用アプリケーションでは、この種のシステムに3.3Vの電圧レールしか用意されないこともあり、5V CANトランシーバーに比べて省電力という理由で3.3Vのトランシーバーが使われます。
質問3
使用するマイコンのロジック電源が3.3Vの場合は、3.3V CANトランシーバーが必要ですか?
3.3V CANバスを扱っていない限り、3.3V CANトランシーバーは必要ありません。3.3V CANトランシーバーと、3.3Vロジック電源に対応できるCANトランシーバーには、違いがあります。3.3V CANトランシーバーは、3.3VのVCC電源電圧を使用し、通常は産業用アプリケーションで使われます。CANバスは3.3Vを基準とするので、より標準的な5V CANトランシーバーと比べてリセッシブ電圧とドミナント電圧が異なります。
マイコンが接続するのは、TXD(Transmit Data)、RXD(Receive Data)、STB(Strobe)などのCANトランシーバーのロジック・ピンのみであり、実際のCANバスとはインタフェース接続しません。そのため、対象のマイコンが3.3Vロジック電源を使用する場合、CANバスは5Vのまま、「TCAN1042V」や「TCAN1051V」のような、3.3V電源電圧を基準とするロジック・ピン付きのCANトランシーバーを使用できます。ピン5はVIOピンなので、これらのトランシーバーのピン5に3.3Vを印加することで、RXDピン、TXDピンおよびSTB/Sピンで3.3Vのロジックレベルを使用できます。図2にこの構成を示します。
まとめ
5Vの世界から外れたCANについて考えていると、頭が混乱してくるように感じられるでしょうが、各種のトランシーバーの機能を理解しさえすれば、正しいトランシーバーを選択したり、トランシーバーが消費する電力を計算したりといったことが簡単にできるようになるでしょう。
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