“不確実”だからこそ必要な「設計力」と「デジタル人材」の強化:ものづくり白書2020を読み解く(3)(2/5 ページ)
日本のモノづくりの現状を示す「2020年版ものづくり白書」が2020年5月に公開された。本連載では3回にわたって「2020年版ものづくり白書」の内容を掘り下げる。第3回では“不確実”な世界だからこそ製造業に求められる「設計力強化の必要」と「人材強化の必要」について解説する。
遅れる日本のエンジニアリングチェーン強化の動き
しかし、2019年12月に国内製造業に対して実施されたアンケートを見ると、エンジニアリングチェーンの上流に当たる製品設計力のここ5年間での変化の状況について、約4割が向上していると答えたものの、半数以上が「あまり変化はない」と回答している(図3)。製品設計のリードタイムに関しても同様で、約4割が短くなっていると回答した一方で、半数以上が「あまり変わらない」としている(図4)。
また、国内製造業に対して工程設計(生産技術)力のここ5年間での変化については、36.9%が「向上している」、58.8%が「あまり変化はない」、4.3%が「低下している」と回答した(図5)。
工程設計力が「向上している」と回答した企業に対してその要因を確認したところ、「生産技術、製造、調達といった他部門との連携強化」と回答した企業が最も多く、79.2%を占めた。以下「営業、アフターサービスなどから顧客ニーズのフィードバックを強化(26.5%)」「デジタル人材の育成、確保(22.5%)」が続いている(図6)。
一方、工程設計力が「低下している」と回答した企業についても同様にその要因を確認すると、「ベテラン技術者の減少(79.4%)」「製造現場との連携不足(30.9%)」「属人的な設計プロセス(25.0%)」「間接部門の人員削減(19.1%)」が上位に挙げられている(図7)。
この結果から、日本の製造業においては工程設計力の維持を熟練者の技に頼りがちで、その技術を後継に引き継ぐことが課題となっている様子がうかがえる。また、他部門との連携は、工程設計力の向上・低下双方の要因として上位に挙げられており、他部門との協調が工程設計力強化の鍵であることが分かる。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.