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新生umatiの進む道――工場内のあらゆる機械装置の共通インタフェースへいまさら聞けないumati入門(4)(1/5 ページ)

工作機械の共通インタフェースとして注目を集める「umati」について紹介してきた本連載だが、今回はこの「umati」についての大きな変化があったため、その内容について解説したい。

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 工作機械の共通インタフェースとして注目を集める「umati」について紹介してきた本連載だが、今回は「umati」についての大きな変化があったため、その内容を解説する。

新しいumatiの2つの大きな変化

 2017年に工作機械の共通インタフェースとして規格化が始まり、2019年の国際金属加工見本市「EMO2019」では大規模な企画展示が行われたことで、広く知られるようになってきたumatiだが、大きな転機が訪れた。

 2020年4月に、umatiを中心となり進めてきたVDW(ドイツ工作機械工業会)がVDMA(ドイツ機械工業連盟)と共同で「umatiをuniversal machine tool interfaceからuniversal machine technology interfaceに拡張する」という発表を行ったのである(図1)。これは単なる呼称の変更だけにとどまるものではない。これまで対象としてきた工作機械だけでなく、ロボットや射出成形機など工場内のさまざまな機械装置の共通インタフェースを総称するブランドとしてumatiを拡張していくという方向性が示されたのだ。

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図1 これまでのロゴ(左)から新しいロゴ(右)へ。「universal machine technology interface」として拡張するumati(クリックで拡大)出典:VDW掲載図を基に筆者が作成

 これだけでも実に大きな発表であるのだが、実はもう1つ別の大きな決定がなされている。工作機械の共通インタフェースの規格策定を、これまで中心となって進めてきたumatiの推進組織から分離するというものだ。今後の規格策定はumatiが採用しているOPC UA(※)の仕様の技術管理を行っているOPC Foundation(OPC協議会)内で、VDMAなどが中心となり進められていくことになったのである。一方で、umatiの推進組織はOPC Foundationが規格として定めた共通インタフェースを機械メーカーやユーザーに広く告知し、実際の適用をサポートしていく役割を担うことになった。

(※)関連記事:「OPC UA」とは何か

 このように大きな構造変革を迎えたumatiであるが、その背景にはどのような狙いが存在しているのか。今回はその経緯と背景を紹介していく。

umatiに関わるOPC Foundation、VDMA、VDWの役割

 umatiの構造変革の経緯を説明する上で欠かせないのがOPC Foundationの存在である。OPC Foundationとは「OPC協議会」のことで、世界標準の通信規格となりつつあるOPC UAの仕様の技術管理を行っている組織である。umatiもその共通インタフェースのベースとしてOPC UAを採用していることから深い関わりを持っている。例えば、OPC Foundationが主催して2019年4月にドイツで行われたOPCカンファレンス「World Interoperability Conference」について紹介しよう(図2)。

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図2 OPCカンファレンス「World Interoperability Conference」の様子(クリックで拡大)出典:OPC Foundation「OPC in the World

 このカンファレンスは同じくドイツで開催された世界最大規模の産業機器展示会「Hannover Messe 2019」の併催行事として開催され、OPC UAをベースにしたCompanion Specification(コンパニオン仕様)の策定を進めている団体が活動状況の報告を行った。取り組みは機械種別や業界ごとに行われており、その数は35種類にも及んでいる(図3)。もちろん工作機械向けの共通インタフェースの策定に取り組んでいるumatiもその中の1つだ。

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図3 2019年4月のOPCカンファレンスに参加したOPC UAをベースとして共通インタフェースを策定している活動団体一覧(クリックで拡大)出典:OPC Foundation掲載図を基に筆者が作成

 この活動の中でも重要な役割を担っているのがVDMAである。2019年4月の時点で35種類あるOPC UAを用いた共通インタフェースの策定団体のうち、射出成形機や産業用ロボットなど実に13の活動団体を取りまとめている。そもそもVDMAとはドイツ国内のさまざまな工業会の連合体である「ドイツ機械工業連盟」のことで、その規模は欧州で最も大きく3000社を超える機械メーカーなどが加盟している。その使命はもちろん産業界の発展と加盟企業全体の利益向上であり、高い公平性が求められ異なる業界間での整合も必要な規格策定という活動を主導するには最適な組織だといえるだろう。

 一方で、umatiを発案しその推進を後押ししてきたのはVDWという「ドイツ工作機械工業会」だ。名称が似ているので混乱を招きやすいのだが、VDWは工作機械業界に特化した工業会であり、ドイツ国内の工業会の1つとしてVDMAへも加盟している。日本と同じくドイツでは工作機械の産業としての重要性は高く、また、その工業会であるVDWは工業会の連合体であるVDMAよりも古くに発足して活動を続けている。

 これらの背景から、数多くの機械装置の共通インタフェースはVDMAが主導しているのに対して、工作機械の共通インタフェースはVDWが直接umatiというブランドと推進組織を立ち上げ、規格の策定が進められてきたのである。2019年9月にはドイツで開催されEMO2019においてumatiの大規模な企画展示を実現し、規格の普及に向けた第一歩を踏み出す成果を挙げたことも記憶に新しい(※)

(※)関連記事:EMO2019に見る「umati」最前線、工作機械110台がつながった「umati@EMO2019」企画

 このままumatiの規格策定は一気に加速すると思われていたが、2020年に入りさまざまな議論が沸き起こる。OPC UAを管理するOPC Foundation、数多くの規格策定を進めるVDMA、そしてVDWの後押しで独自に活動するumatiの策定組織という3つの業界団体が、将来のあるべき姿のためにそれぞれの目的と役割についての議論を始めたのである。その結果として2020年4月、今回の構造変革へと至るのである。

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