マイクロソフトが買収した「ThreadX」あらため「Azure RTOS」はまだ実体がない:リアルタイムOS列伝(4)(3/3 ページ)
IoT(モノのインターネット)市場が拡大する中で、エッジ側の機器制御で重要な役割を果たすことが期待されているリアルタイムOS(RTOS)について解説する本連載。第3回は、マイクロソフトが2019年4月に買収し、名称を「Azure RTOS」に変更した「ThreadX」を取り上げる。
「ThreadX」が「Azure RTOS」になってどう変わったのか?
ということで、ここまでがExpressLogicのThreadXの簡単な紹介である。
読者の皆さんとしては、そのThreadXがAzure RTOSになってどう変わったのか? という話が一番気になるのではなかろうか。普通に考えれば、既に提供が始まっているマイクロソフトのIoT(モノのインターネット)セキュリティソリューション「Azure Sphere」とは連携が取れていそうに思うのだが、実はこちらはまだ実現していない。
ExpressLogicのThreadXは多数のサポートデバイスが存在するが、Azure RTOSとして現在サポートが表明されているのはRenesas Synergyのみである。もともとRenesas Synergyは、発表当時からThreadXを標準サポートしており、その意味ではマイクロソフトが買収したからと言って何か追加されたとかいう話でもない。
現状のハードウェアパートナーとしては、Microchip、NXP、Qualcomm、Renesas、STMicroelectronicsの5社の名前が挙がっているが、これらは「今後開発キットを提供予定」となっており、現時点ではまだ具体的なキットそのものは存在しない。
またライセンス形態も「MCUそのものに事前ライセンスを提供し、それを利用すれば追加の料金が一切不要」という、Azure Sphereと同じライセンス形態を発表しているが、対応リストを見ると現状では“More coming soon”とだけ書かれているなど、何というかまだ実体がない。
ThreadXからAzure RTOSになっての現時点における最大の違いは、クラウド基盤である「Azure」のIoT向けサービスである「Azure IoT」とのConnectivity(接続性)と思われる。例えば、「Azure Security Center for IoT」ではAzure RTOS向けのモジュールの提供が始まっている。とはいえ、まだラインアップとしては十分ではないし、Azure Sphereとの違いをもう少し分かりやすく説明する必要があるだろう(機能的にAzure Sphereを現状のAzure RTOSでサポートするのはかなり無理がある。ただし、Azure Sphereで動くコンテナの中でAzure RTOSが稼働するというのは将来的にはあるかもしれないが)。
ここまで何度か紹介したTechFactoryの記事の最後で、「ラミー氏が次の事をするべく会社を売っ払ったのでは? という疑念が消えない」と書いたのだが、同氏は実際にはPrincipal Project Manager Azure RTOSという肩書で、引き続きマイクロソフトに在籍していることが分かった(子会社化されたExpress LogicのCEOも引き続き務めている)。もしかすると、Azure IoTとの統合に向けてThreadXの作り直しを現在やっているのかもしれない。
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