ポイントはデジタルで「ずらす」、エネルギー業界のDXとは?:モノづくり最前線レポート(2/2 ページ)
東芝は2020年6月26日、エネルギー事業のDX(デジタルトランスフォーメーション、デジタル変革)が社会で果たす役割について解説する第7回東芝技術サロンをオンラインで開催した。
デジタルで「ずらす」
東芝ではCPSおよびDXを推進することで、デジタルサービスを自社の製品向けだけでなく、保守・メンテナンス向けサービス、運用サービスなどによりサービス領域を幅広くする。また、電力会社だけでなく、エネルギー隣接領域へデジタルサービスを展開するなど、領域を「ずらす」ことで顧客のセグメントを拡大するなど事業領域を拡大している。この内、サービス面では既存の短期的な既存事業のトランスフォーメーション推進による現場課題の解決から、中期的に新領域の成長を種づくりとする経営課題まで解決するなど、これまでよりも一歩踏み込んだ顧客への貢献ができるように取り組みを進めていく。
東芝の施策については、DXを積極的に推進する中井氏が「東芝ではビジョンとして『将来のエネルギーの在り方そのものをデザインする』ことを掲げており、その中でデジタル化が重要な役割を果たすという考えだ」と述べた。そして、デジタル化を推進していく上で重要となる「トータルバリューチェーン最適化」「デジタルモダナイゼーション」「エネルギー最適運用」「業務拡張に向けたトータルセキュリティ対策」のToshiba IoT Reference Architecture(※)に準拠したエネルギーシステム向けIoTプラットフォーム上で動く4つのソリューションを紹介した。
(※)関連記事:CPSの勝ち筋とは? “サービス連打”を目指す東芝の挑戦
東芝のエネルギーシステム向けIoTソリューションには「サービスデジタルツイン(プラントの性能評価、全体異常予兆検知)」「個別異常検知(トラブルに応じた個別異常予兆検知)」「運用性向上(タービン急速起動設備診断、ボイラ燃焼制御改善、スートブロワ最適化)」などプラントレベルのソリューションから、「統合ダッシュボード(複数電力システムの統合管理)」などの総合的なサービスまでがある。これらを同じプラットフォーム上で運用しており、マイクロサービス、ハイブリッド構成、分散データサービス、情報モデルによるデータアクセス(オントロジー)、オープンAPIによる外部連携など5つの特徴を生かして、さまざまな分野で適応中だ。
4つのソリューションのうち「トータルバリューチェーン最適化」は、エネルギーミックスの最適化に向けて、エネルギー産業の基本価値である「3E(Energy Security、Economic Efficiency、Environment)+S(Safety)」の最良を実現するための最適な組み合わせの意思決定をサポートする。具体的には太陽光など再エネの発電が増加する中、昼間の火力、水力発電の需要は急激に減少し、朝夕については大きな需要変化が起こるという問題に対応する必要がある。それに対して、需要予測を正確に行い、再エネの発電量を予測する。その上で火力、水力発電の運用計画を最適化していく。
需要予測については、多地点の数値気象予測とAI手法の組み合わせにより実施する。なお、同需要予測については東京電力が開催した「電力需要予測コンテスト」で最優秀賞を受賞した実績がある。太陽光の発電予測は、独自の数値気象とPV設置状態の機械学習により、高精度と実用性を実現している。同予測も東京電力と北海道電力が共催した太陽光発電予測技術コンテスト「PV in HOKKAIDO」でグランプリに輝いている。
発電の運用最適化については最適化アルゴリズムソリューション(プラント運用条件や燃料制約を考慮した最適発電)を適用する。この予測技術や最適化技術を活用し、電力市場調達・販売、(VPP、エネマネあんどん)発電、送配電などについて取り組む。「それら取り組んだものは、プラットフォーム上のマイクロサービスとして連携し、最終的には1つのプラットフォーム上で融合させて、連携させることでエネルギー事業全体のバリューチェーンの最適化を図る」(中井氏)としている。
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